体液バランスの維持を司る腎臓の機能が破綻した腎不全患者では、さまざまな異常が生じます。その異常を早期に、ひどくならないうちに発見し、対処できるものは対処していくことが重要です。とくに健常者と異なり予備力が少ない透析患者では、早期発見は病状の悪化、入院の回避、予後の改善のために必要となります。 本書では、第1章として、現在のわが国の透析患者の特徴である高齢化に関連する栄養不良および慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常(CKD-MBD)を考慮して、透析患者によく施行されている項目の血液検査を選びました。検査の目的と透析患者の基準値や目標値を知ることは、異常の発見のためケアする立場にいる人々にとっては必要不可欠です。検査の目的や意義、検査値の読みかた、異常値が出た場合の対処方法および患者に伝えてもらいたい日常管理のアドバイスなどについて、現場で活躍されている先生方に解説してもらいました。 透析患者には血液検査以外にもさまざまな検査が実施されますが、検査の意図を十分に理解して対応していくことが重要となります。そこで、第2章では理学的検査を取り上げました。具体的には、日常臨床で異常に気づいた場合にすぐに対処が必要となる血圧測定や胸部エックス線検査、心電図から、スクリーニング目的や病態の把握のために行われる眼底検査、腹部超音波、コンピュータ断層撮影、内視鏡検査、シャント造影などです。さらに、フレイル、サルコペニア、バーセル指数、主観的包括的栄養評価(SGA)/高齢者栄養リスク指標(GNRI)までを含めました。各検査の目的を十分に把握していただきたいと思います。また、フレイルやサルコペニア、SGA/GNRIは医療者が意識して検査を実施してみていかなければ見逃してしまいやすく、早期であれば治療も可能です。ぜひ一読していただきたいと思います。 最後に、本書が患者の早期異常の診断およびその対処への参考となり、患者のQOLを高めるために役立ってくれることを期待しています。2018年10月友秀会伊丹腎クリニック理事長/院長伊丹 儀友
元のページ ../index.html#3