なぜ起こるの? アミロイド線維の前駆蛋白はβ2ミクログロブリン(β2-microglobulin;β2-m)という蛋白質です。β2-mは分子量11,800の蛋白質で、おもにリンパ球系の細胞表面に存在します。細胞の崩壊に伴って一定量が血中に放出されています。この物質は腎臓の糸球体で濾過された後、大部分が尿細管で再吸収され分解されます。腎機能が低下すると、この一連の機能が障害されるため、血中のβ2-m濃度が高くなります。透析導入の時点で透析患者の体内にはβ2-mが蓄積されています。分子量が1万を超える物質は透析では除去しきれず、長期透析患者の体内にはさらに蓄積されます。 写真は手根管症候群の患者の横手根靭帯を染色したものです。アミロイド線維の沈着した部位は赤く染色されます(写真左)。右の写真は同じ部位でβ2-mの免疫染色をしたものであり、β2-mの沈着した部分は茶色に染まります。赤色の部位と茶色の部位が一致していることがわかります。このことからもアミロイドの前駆物質はβ2-mであることが理解できると思います。どんな症状? 厚生労働省のアミロイドーシスに関する調査研究班による透析アミロイドーシスの診断基準を表11)に示します。主要症状は骨関節症状であることがわかります。 透析アミロイドーシスというと、指のしびれる手根管症候群や、指のひっかかりがみられるばね指がよく知られています。確かにこの二つの疾患は、当院での手術件数の第1位、第2位を占め写真 手根管症候群の患者の横手根靱帯DFS染色(アミロイド)β2-m免疫染色2第章14透析アミロイドーシス95透析ケア 2019 夏季増刊
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