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なぜ起こるの? 透析アミロイドーシスの合併症としてよく知られるのが、手のしびれが主症状である手根管症候群です。 手根管は手根骨と横手根靭帯により形成され、内部を指屈筋腱と正中神経が走行しています。横手根靭帯は屈筋腱を束ねている靭帯であり、「屈筋支帯」とも呼ばれています。透析患者の場合、β2ミクログロブリン(β2-microglobuline;β2-m)を前駆蛋白とするアミロイド線維が横手根靭帯に沈着して靭帯が肥厚し、正中神経を圧迫するため、手根管症候群が発症すると考えられています。正中神経は親指から薬指の半分(親指側)の領域を支配しているため(図1)、その部分のしびれや痛みが出現します。95ページの写真を参照してもらえれば、β2-mがアミロイド線維の前駆蛋白になっていることがよく理解できると思います。どんな症状? 指のしびれがあるけれど手根管症候群かどうかはっきりしないときは、誘発テストが診断に役立ちます。誘発テストとしては、ファレンテストとティネル徴候が代表的です。ファレンテストは、手関節を手のひらのほうに曲げた状態を保つと、指のしびれが発生したり、ひどくなったりするというものです(図2)。手根管症候群では、手関節を屈曲することにより、手根管内の圧力が高まり、正中神経の圧迫が強くなることでしびれが誘発されます。よく患者から聞かれる訴えとしては、「自動車の運転でハンドルを長時間握っていると指がしびれる」「自転車に乗っている正中神経横手根靭帯(屈筋支帯)図1 正中神経と横手根靭帯2第章29手根管症候群155透析ケア 2019 夏季増刊

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