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なぜ起こるの? 腎機能障害時には尿を十分に排泄できないため、体液が貯留し、血管内・血管外ともに水分量が過剰になります。血液透析では、体内に貯留した水分量を減らして適切な体液量にするために、血液を取り出してダイアライザへ送り、ダイアライザに陰圧をかけることで血中の水分量を減らします。これを除水といいます。除水を行うと、血管内の水分量が減少しますが、血液には血管外から血管内に水分を引き込む力(これは血中の蛋白質の量によりもたらされ、膠質浸透圧と呼ばれる)があり、失われた水分量は血管外から供給されます。血液透析で行う除水は、あくまでも血管内の水分しか除去できません。血液透析を行うとむくみ(血管外の水分)がなくなりますが、これは血液透析が直接血管外の水分を抜いているのではなく、血管外の水分が血管内へ移行してはじめて除去されるのです。つまり血液透析で血管外の水分を除去するためには、血管外の水分がどんどん血中へ移行する必要があります。 血管外の水分が血中へ移行し、血中へ移行した水分を透析で除水するといった流れが順調にできているときには血圧は保たれます。また、血管内の水分量が減る状況では、生体は全身に十分な血液を流すために血管を収縮させたり、心臓から送り出す血液量を増加させたりして、可能な限り血圧を維持しようとがんばります。しかし、血管内への水分移行量よりも多くの水分が除水により血管内から失われ、生体の適応能力を超えると、血圧が保てなくなって急激な透析低血圧になります(図1)。透析低血圧は、表のような場合に起こりやすくなります。図1 透析中に血圧が低下する機序透析で除水水 分水 分血中蛋白質血圧サポート心臓からの血液量アップ血管収縮膠質浸透圧除水量が多い血管の収縮が悪い心臓からの血液供給が少ない膠質浸透圧低下水の透過性低下蛋白質が少ない水 分除水量と膠質浸透圧のバランスが保たれると血圧が維持される9透析ケア 2019 夏季増刊低血圧1第章1

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