130102004
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⁃⁃脂質(あぶら)の輸送 互いに溶け合わない、調和しないことをたとえて「水と油」メモ1)といいますね。脂質は血液中を運ばれていきますが、その実態は、血液から赤血球と白血球、血小板という血球成分を取り除いた血漿と呼ばれる水分(血漿からさらにフィブリノーゲンを除いたものが血清)の中を運ばれていきます。 血中の脂質であるコレステロール、トリアシルグリセロール、遊離脂肪酸、リン脂質のどれも「あぶら」ですから、水には溶けません。しかし、細胞膜の材料としてコレステロールやリン脂質を求める全身の細胞はもちろん、副腎皮質や生殖器・胎盤などにステロイドホルモンの材料としてコレステロールを運ばなければなりません。骨格筋や心筋でエネルギーとして利用される遊離脂肪酸、脂肪組織で貯蔵されるトリアシルグリセロール「脂」と「油」脂(あぶら)と油(あぶら)の違いは、一般に、常温で固体のものを脂(fat)、液体のものを油(oil)という。飽和脂肪酸はfat、不飽和脂肪酸はoilと考えてよい。中井洋 なかい・よう1974年に東北大学医学部を卒業後、2年間の臨床研修を経験。1976年から東北大学医学部で平滑筋の興奮と収縮の研究を行う。1981年からニューヨーク州立大学ダウンステートメディカルセンターで細胞膜のイオンチャネルを研究。1985年に帰国後、人工膜を用いた血液透析、腹膜を利用した持続携行式腹膜透析(CAPD)に従事。細胞膜、人工膜、腹膜と、膜の医学に携わる人生になった。著書は『ケアに生かす「透析学」入門』『教えて! ナカイ先生 透析患者のからだのしくみ』(メディカ出版)など。トウ子:前回のお話で、脂質の重要性がよくわかりました。肉の脂身は甘くておいしいですよね。脂ののったお魚も大好き!先 生:トウ子さんはグルメですね。おっしゃるとおり、油料理はおいしいですよね。塩味も食欲をそそりますが、油を使った料理は塩味抜きでもおいしく食べられます。天ぷらやとんかつ、とりのから揚げなどは、天つゆやソース、塩などがなくてもおいしく食べられて、透析患者さんにはいいですね。トウ子:とくに揚げたてはおいしいですよね。透析患者さんも揚げたての料理を食べると、食塩摂取量を少なくできそうですよね。先 生:鋭いですね。そのとおりです。トウ子:先生に褒められるとうれしいです! 先生、前回の内容はよくわかったのですが、不思議に思っていることがあります。血液には脂質が混じっているはずなのに、採血した血液はもちろん、血液透析で回路を流れている血液も油っぽい感じがしないじゃないですか。どうしてでしょう。先 生:またまた鋭い疑問ですね。今回はトウ子さんの疑問に答える勉強をしましょうね。第4回乗り物に乗って血液中を運ばれる脂質72 (368) 透析ケア 2020 vol.26 no.4

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