130102004
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(中性脂肪)も体内に張り巡らされている血管を利用して運ばれなければなりません。しかし、「水とあぶら」の問題を解決しないと運べません。 では、どうやって血液の中というか、水の中を「あぶら」である脂質がスムーズに移動できるのでしょうか。上手なたとえかどうかはわかりませんが、血液が流れる血管を高速道路として考えてみましょう。人は高速道路を歩くことはできません。しかし、人が車に乗れば高速道路を進めます。同様に脂質は血液中を流れることはできませんし、流れてはいけないはずです。脂質が流れたら簡単に血管は詰まってしまうでしょう。しかし、脂質も血液中で車のようなものに乗れば、「水とあぶら」の問題は解決できそうです。そこで、脂質を水に溶けやすい乗り物というか容器に入れてしまえばどうでしょうか。⁃⁃リポタンパク質という乗り物に乗せられる脂質リン脂質で脂質を包んでしまう リン脂質は身体中にたくさんある脂質です。リン脂質は1種類ではなく何種類もありますが、もっとも多いのはレシチン(ホスファチジルコリン)です。リン脂質の分子は細長い構造をしており、片方の端は水に溶けやすい性質(親水性)で、親水基と呼ばれます。反対側の端は水をはじく性質(疎水性)をもち、疎水基と呼ばれます。 水の中でリン脂質が丸まって球状(ミセルと呼ばれる)になることはよくあります。外側である水のほうを向いて並ぶのはどの分子も親水基です(図1)。内側は疎水基が並ぶことになりますが、もし内側に水があると反発して並べません。その球状の袋の中に「脂(あぶら)」が入っており、疎水基と親和性の高い(仲のよい)「脂質」が隣り合う状態になると袋も袋の中身も無事にできあがります。脂質の輸送を可能にする第一歩です。アポタンパク質がリン脂質と袋の骨格を構成する リン脂質は脂質を乗せる乗り物の重要な構成成分ですが、特殊な蛋白質がリン脂質といっしょに袋の壁を構成しないと脂質を包み込む壁ができません。この蛋白質をアポタンパク質と呼びます。リン脂質とアポタンパク質で外側を構成し、内容物として脂質が取り込まれた状態でリポタンパク質が完成です。これで、脂質を無事に運ぶことができるというわけです。アポタンパク質の種類によって乗せる脂質や受け渡す相手が決まる たとえばアポタンパク質Bがリン脂質と骨格を形成すると、コレステロ透析ケア 2020 vol.26 no.4 (369) 73

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