130102004
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 健常人では、血清リンは十二指腸や回腸、大腸などで吸収され、腎臓で濾過・再吸収された結果、リン酸としてほとんどが尿中へ排泄されます。そのほかの調節因子は副甲状腺ホルモン(PTH、☞47ページ)、ビタミンD、線維芽細胞増殖因子23(FGF23、☞48ページ)などです。 リンは生体内の重要な元素であり、カルシウム(前項参照)などと共働して歯や骨の産生に必須です。すべての細胞の細胞膜の構成要素(リン脂質二重層)でもあります。また、生体内のエネルギー源であるATPや、イノシトール三リン酸などの細胞内の情報伝達にもかかわっており、また無機リンは酸塩基平衡の維持にも必須です。このように生命維持に深くかかわる一方で、慢性腎臓病患者や透析患者では、動脈硬化5)など患者の予後を悪化させる側面もあります。 引用・参考文献 1)Yokoyama,K.etal.Shouldthetargetedvalueofthephosphatebereviewedinthenormalrangefromtheviewpointofvascularcalcification?KidneyInt.77(10),2010,928.2)日本透析医学会.慢性腎臓病に伴う骨・ミネラル代謝異常の診療ガイドライン.日本透析医学会雑誌.45(4),2012,307-16.3)McGovern,AP.etal.Serumphosphateasariskfactorforcardiovasculareventsinpeoplewithandwithoutchronickidneydisease:alargecommunitybasedcohortstudy.PLoS.One.8(9),2013,e74996.4)田中元子.ミネラル:リン.透析ケア.24(8),2018,690-1.5)Blacher,J.etal.Arterialcalcifications,arterialstiffness,andcardiovascularriskinend-stagerenaldisease.Hypertension.38(4),2001,938-42.リン(P)6よい面と悪い面の二面性をもつ・体内に約800gあり、約85%が骨・歯に、約14%が生体活動のエネルギー源であるアデノシン三リン酸(ATP)として存在し、約1%が細胞外液に存在1)・動脈硬化に深く関与する・血清リン濃度の基準値は3.5〜6.0mg/dL2)・健常人でも過剰なリン負荷は心血管疾患の発症リスクを高める3、4)まめ知識岡おかだ・けいこ田慶子 偕行会名古屋共立病院腎臓内科新人スタッフ応援号! 物質キャラ図鑑でまなぶ 透析患者の病態と血液透析Special Edition透析ケア 2020 vol.26 no.4 (321) 25

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