130102010
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Special Edition血圧とは血管の壁を押す圧力 血圧とは、心臓から駆出され全身に送り出された血液が、血管の壁を押す圧力を数値で表したものです。血圧は心拍出量と末梢血管抵抗の積で規定されているので、血圧の変動は、心拍出量と末梢血管抵抗の増減とのかかわりによって決定されていることがわかります。心拍出量と末梢血管抵抗は、それぞれ多くの因子により調節を受けているので、目の前の患者の血圧異常が、どちらの増減が原因で起こっているのかを考えて対処する必要があります。たとえば、透析患者では細動脈の動脈硬化が進行している症例が多く観察されますが、この細動脈は抵抗血管と表現され、細動脈が硬くなれば末梢血管抵抗が増し、血圧が高くなります。したがって、細動脈を拡張する血管拡張薬を投与することで血圧を管理するのは、理にかなっているわけです。血液透析患者の血圧は 水分の蓄積と動脈硬化で高まる 本稿では末期腎不全患者および血液透析療法と、血圧の変動との関係を考えてみたいと思います。末期腎不全患者の8~9割に高血圧を認めることが知られています。なぜなら、末期腎不全患者には、前述した血圧を規定する因子である心拍出量と末梢血管抵抗を増加させる多くの要因があるからです。たとえば、自尿が確保できない透析患者では、体内への食塩や水分の蓄積が起こり、細胞外液量が増加します。細胞外液量、すなわち血液量の増加は心拍出量の増加につながるので、血圧が上昇しやすい素地が形成されます。これは、体液量依存性の高血圧と呼ばれます。一方、腎機能が低下するにしたがい、慢性炎症やリン・カルシウムの代謝異常といった慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)に特有の動脈硬化の危険因子が集積して、血管石灰化を含む動脈硬化が進行することが報告されています1)。すなわち、末期腎不全患者には、血圧を規定する2つの因子がともに高まる条件がそろっているのです。 では、この状態の患者が血液透析を始めると、どのようなことが起こり得るかを想像してみます。血液透析療法は断続的でイレギュラーな治療法なので、週3回の血液透析を行う患者の場合、非透析日が2日間続くタイミングが、かならず週に1回訪れます。自尿が少ない、あるいはまったくない場合、この期間に患者の体水分量は過剰になりやすいわけです。中2日空きの透析直前の血圧が高い理由の一つはここにあります。一方で、体内にたまった水分を取り除くことも血液透析の治療目的の一つです。当然、常じょうき・のぶひこ喜信彦 東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科教授原はらだ・みなこ田美菜子 日産厚生会玉川病院総合診療科高くても低くてもいけない血圧特集110 (906) 透析ケア 2020 vol.26 no.10

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