130102010
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Special Edition透析低血圧への対応方法 低血圧は透析患者に高頻度に認められる合併症です。血圧は水道の蛇口(心臓)とホース(血管)で例えられるように、心拍出量と末梢血管抵抗の積で規定され、そのどちらか、あるいは両方が減少することにより血圧低下が起こります。透析患者は心疾患を高率に合併しており、さらに自律神経の機能障害や動脈硬化、昇圧ホルモンに対する反応性低下などにより、血圧維持システムが不安定です。 透析低血圧に対して、実際の臨床現場では長時間透析や短時間頻回透析、体外限外濾過法(extracorporeal ultrafiltration method;ECUM)、血液透析濾過(hemodiafiltration;HDF)といった治療法の選択をはじめ、低温透析液や無酢酸透析液の使用、透析中の食事の中止、降圧薬の減量・中止、生理食塩液や昇圧薬の投与などが行われます。昇圧薬を使用した低血圧予防1.昇圧薬のしくみ 前述の方法のうち、昇圧薬には降圧薬と逆の作用、すなわち①血管を収縮させる(血管に分布している交感神経であるα1受容体を刺激する)、②心拍出量を増加させる(心臓に分布している交感神経であるβ1受容体を刺激する)といった作用があります。イメージしてみてください。水道のホースから水を勢いよく出すためには、まず蛇口をひねって水量を増やし、さらにホースの出口を指で狭くしてホース内の圧力を上げればよいわけです。以下に、一般的によく使用される昇圧薬を3剤紹介します(図)。2.アメジニウムメチル硫酸塩 (リズミックⓇ) 血管のα1受容体および心臓のβ1受容体を刺激し、血管収縮と心拍出量の増加によって血圧を上昇させます。最大効果が期待できるのは投与後3~4時間くらいで、効果発現まで比較的長時間かかります。多くの場合は、透析開始前や透析開始時に使用されます。3.ミドドリン塩酸塩(メトリジンⓇ) 血管のα1受容体を刺激し、血管収縮によって血圧を上昇させます。また、静脈収縮により静脈灌流量と心拍出量を増加させます。最大効果が期待できるのは投与後1時間くらい(ただし健常人データ)で、効果発現までは比較的短時間です。多くの場合は、透析開始時や透析中に使用されます。4.ドロキシドパ(ドプスⓇ) 血管のα1受容体および心臓のβ1受容体を刺林はやし・としひで俊秀 東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科講師特集3 低血圧と関連症状を予防・治療・ケアする!3低血圧と関連症状の予防方法②適切な薬剤の投与26 (922) 透析ケア 2020 vol.26 no.10

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