130102010
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Special Edition適切なドライウエイトを 設定しよう 透析導入期の患者では、尿量はある程度ありますが、透析療法は腎機能を改善させる治療ではないため、透析生活が長くなると徐々に腎機能が低下し、尿量が減少します。そして、最終的には尿は出なくなります。そのため、透析患者は食塩・水分制限をしていても、基本的には体液量が過剰な状態になります。体液量の過剰は高血圧の原因になります。体液量過剰による高血圧を予防するために重要なのが、適切なドライウエイト(dry weight;DW)の設定です。DWが適正に維持されれば、降圧薬が不要になったり、降圧薬を減量できたりする可能性があります。高血圧を予防するには、まずDWが適切かどうかを確認することが大切です。 DWは、日本透析医学会の『血液透析患者における心血管合併症の評価と治療に関するガイドライン』1)で「体液量が適正で、透析中に過度の血圧低下を生ずることなく、かつ長期的にも心血管系への負担が少ない体重」と定義されています。DWを設定するためには透析中に著明な血圧低下がない、むくみがない、胸部エックス線検査で胸水や肺うっ血がなく、心胸比(cardio thoracic ratio;CTR)が50%以下(女性では53%以下)などの指標があります1)。また、体液量の評価にはヒト心房性ナトリム利尿ペプチド(human atrial natriuretic peptide;hANP)があります。一般的にhANPは透析後の採血で評価し、心疾患のない透析患者で50~100pg/mLが目標です。心機能が悪いとCTRが大きくなるように、hANPも高値になります。降圧薬を見直してみよう1.カルシウム拮抗薬 降圧薬にはいろいろな種類がありますが、血圧を下げるために使用しやすいのはカルシウム拮抗薬(calcium channel blocker;CCB)です。CCBは血管平滑筋のカルシウム(Ca)チャネルを阻害して平滑筋を弛緩させて、末梢血管抵抗を減らすことで降圧作用を発揮します。CCBの排泄経路は肝臓や胆汁で、透析性がほとんどないことから降圧効果が強く、また副作用が少ないため多くの透析患者で使用されています。2.レニン・アンジオテンシン系阻害薬 アンジオテンシン変換酵素(angiotensin-converting enzyme;ACE)阻害薬やアンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬(angiotensinⅡreceptor blocker;ARB)などのレニン・アンジオテンシン系阻害薬は、降圧作用だけではなく心血管系保護効果があります。そのため、心田たなか・ゆり中友里 東邦大学医療センター大橋病院腎臓内科准教授高血圧と関連症状の予防方法①ドライウエイト・薬剤の見直し2特集5 高血圧と関連症状を予防・治療・ケアする!42 (938) 透析ケア 2020 vol.26 no.10

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