16透析ケア 2020 冬季増刊対象患者の特徴・看護問題 壮年とは、「血気盛んで働き盛りの年ごろ。また、その年ごろの人」1)とされており、厚生労働省の「健康日本21」では25〜44歳を壮年期としています。壮年期に入ると、青年期にピークに達した身体機能の安定・維持を図りながらも、徐々に衰えを感じはじめ、生活習慣病やがんのリスクが高くなります。心理的・社会的には、結婚・子の養育・親の介護などの家庭的な役割や働き盛りの年代としての社会的充実を図る時期といわれています。 エリクソンの発達理論では、壮年期の心理的課題を「生殖性対停滞」と定義しています。「生殖性」では、家庭や職場で次世代の育成に関心をもちはたらきかけることにより、社会とのつながりや達成感を得ることができます。一方、「停滞」すると次世代への関心がもてず、社会とのつながりや意欲が低下します。とくに、壮年後期になると「人生半ばの過渡期」を迎えます。この時期は、身体機能の衰えを感じ、人生の折り返し地点に達したという思いとともに、この先の展望を考えたり、老いを感じたりすることもあります。加えて、近年の日本では、核家族や単身世帯の増加、少子高齢化、婚姻率の低下、離婚率の上昇、性の多様性、8050問題にみられるような、さまざまな社会的背景が内在しています。 壮年期患者の透析導入では、そうした心理的・社会的な背景を理解しながら、透析を受けながら生活を調整する方法(生活再編)をともに考えていく必要があります。アセスメントの視点 透析導入期の患者は、バスキュラーアクセス作製や腹膜透析用カテーテル挿入などの身体的変化、透析導入に伴う不均衡症候群の出現、食事・水分摂取や服薬などの自己管理、透析を受けながら暮らしていくための生活再編など、多くの課題に直面します。患者が透析を受けることをどうとらえ、どう向き合っていこうとしているのかをアセスメントし、患者自身がセルフケアやセルフマネジメントできるように支援する必要があります。 とくに、壮年期の透析導入患者は働き手や親としての役割を担うことが多く、透析療法を受け看護問題看護目標(前ページからのつづき)#2 非効果的健康管理透析を受けながら日常生活を送るため、自身の行動を変容しようとする意志を述べることができる
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