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1第 1 章 総論:標準看護計画の目的と透析室における活用10透析ケア 2020 冬季増刊総論:標準看護計画の目的と透析室における活用標準看護計画とは 私たち看護師が行う看護実践は、対象者の観察・情報収集、アセスメント、問題の明確化、目標立案、目標達成のための看護計画立案、実行、評価までの一連のプロセスから成り立っています。そのプロセスの一つである看護計画は、看護を必要とする人の健康問題と期待する成果、期待する成果を得るための個別的な看護実践の計画を記載したもの1)です。看護計画の目的として、看護実践の継続性と一貫性、質の担保があります。看護計画を作成することで、かかわる看護師みんなが同じ項目を観察できること、看護実践をするうえでの情報やケア方法を共有でき、系統的、組織的に実践することが可能になります。 看護はチームで行うため、経験や知識、技術の習熟度の差による影響が及ばないようにする必要があります。多くの領域で作成されている標準看護計画は、基本および領域に必要最低限押さえておくべき重要な看護計画で構成されているため、看護師の経験などの差による影響を減らし、一定レベルの質を確保することが可能になります。透析室での運用 透析患者は2018年末で約34万人に達し、導入患者の平均年齢は2009年末に67.3歳、2018年末は69.99歳と、10年で約2.7歳増加しています。70歳以上の患者の占める割合は、2009年末40.8%、2018年末51.9%と、10年間で11ポイント増加しています2、3)。このように透析患者の増加と高齢化が進み、複数の合併症や認知症対応など、介護度が高い患者が増えています。変化している患者層に合わせて、看護上の問題や計画を立案する必要があります。 また、透析室では、多くの患者の治療が同時に行われ、1回4時間という治療とその前後の時間で看護を行うという特徴があります。患者のベッドサイドケアの時間が限られる状況のなか、効果的に効率よく看護実践を行うために、基本となる標準看護計画があると実践の場ですぐに役立つと思います。透析を行っている医療機関は、規模や機能、患者層などに違いがあります。それぞれの施設で独自に作成することができれば、施設の特徴に対応した使いやすい看護計画ができるでしょう。しかし、実際に独自に一から作成することはなかなかむずかしいと思います。 そこで、本書では、透析患者の個別性を考慮したケアが実践できるように、導入期教育、セルフケア支援、症状・合併症、精神的・社会的援助が必要な患者の4つに分けて、透析患者に必要となるセルフケアや、よくみられる症状・合併症に関する標準看護計画を紹介します。それぞれの施設の特徴に合った看護計画立案・運用を図る際に参考にしてください。

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