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11透析ケア 2020 冬季増刊第1章総論:標準看護計画の目的と透析室における活用ホスピーグループ腎透析事業部統括看護部長 宮下美子 (みやした・よしこ)本書の構成内容1.導入期教育 末期腎不全で腎代替療法が必要となったときは、患者が選択した治療法で透析導入します。本書では血液透析を選択した患者のうち、壮年期患者、高齢患者、緊急導入した患者、そして腹膜透析患者を対象にしました。導入期は、安定した治療を行い体調をととのえること、透析治療が必要となった身体状態の受け入れと透析を受けながら過ごす生活をととのえること、セルフケア能力を高めることが優先度の高い目標になります。 壮年期患者の場合、家庭や仕事など社会的責任があり、その役割を優先した生活を送っているなかでの導入となります。高齢患者の場合は、通院の継続や必要なセルフケア行動をとることがむずかしい人が多いと思います。緊急導入の場合には、腎代替療法に対する説明や検討が不十分で、意思決定を行う余裕もなく治療が開始してしまいます。このように異なる患者個々の状況に合わせて看護計画を立てることが大切です。2.セルフケア支援 導入期に限らず維持透析患者にも、さまざまな場面でセルフケア能力を高める支援は必要です。透析歴の長い患者は増加しており、10年以上の患者は27.7%に達しています2)。透析導入後、心身ともに安定したよい状態で長期に人生を送るためには、セルフケア支援が重要です。 本書では、バスキュラーアクセス、食事や服薬、血圧管理など日常生活に関するセルフケア支援を取り上げました。また、高齢化に伴いADL・IADL、心身機能の低下した患者への支援も追加しました。3.症状・合併症 症状・合併症については、看護の独自性は低く、透析にかかわる専門多職種との協働問題が多くなります。症状・合併症といっても、透析に関連したものと年齢によるものなどがあり、一人で複数の合併症を有し複雑でさまざまな症状を呈する患者もいます。看護の独自性が低いとはいえ、看護師の観察力を活かして計画・実践・評価を行うことで、合併症の予防・早期発見につなげることができます。 本書では、透析中の症状、バスキュラーアクセストラブル、腹膜透析合併症、循環器機能障害、消化器機能障害、呼吸器障害、骨・ミネラル代謝異常、感染症、脳・神経系などを取り上げました。4.精神的・社会的援助 春木は4)、透析患者の精神医学的問題の基本的理解として、①身体的な原因で生じる精神神経症状、②心理的、環境的、状況依存的問題ないし障害を背景にもつ症状の2つに分けています。

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