130102104
10/12

62 (358) 透析ケア 2021 vol.27 no.4 厚生労働省の調査によると、日本の脳血管疾患患者の状況は2017年に111.5万人、患者割合は女性よりも男性が多く占めています1)。透析治療を受けている患者のなかで、脳血管疾患によって死亡した患者割合は、男性5.6%、女性6.0%です2)。透析患者の脳血管疾患による死亡は減少傾向にありますが、ひとたび脳血管疾患を生じると重篤であるため気をつける必要があります。 日本透析医学会の調査によると、脳血管障害は透析患者の死亡原因で心不全、感染症、悪性腫瘍に続く第4位となっています2)。臨床的に、脳血管疾患を発症し緊急入院した患者は複数の慢性疾患を有していることが多く、血液透析患者であることも少なくありません。今回は、透析患者の脳血管疾患を有する血液透析患者の看護における観察や注意点、指導のポイントなどを考えてみます。1出血性脳血管疾患 脳血管疾患は、大きく分けると「出血性脳血管疾患」と「虚血性脳血管疾患」に分類されます。代表的な疾患として、前者は脳出血やくも膜下出血など、後者は脳梗塞や一過性脳虚血発作などです。 出血性脳血管疾患は、その約60%が高血圧性脳内出血であり、高血圧が原因で起こる疾患です。脳内の細こまかい動脈が壊死または微小動脈瘤を形成し、そこに高血圧が加わると脳出血を来すといわれています。出血部位は被殻出血が60%と多く、視床出血10%、橋出血10%、小脳出血10%、大脳皮質下出血10%です3)。2虚血性脳血管疾患 一方、虚血性脳血管疾患は「血栓性」「塞栓性」「血行力学性」に分類されます。「血栓性」とは動脈硬化による動脈の狭窄部が血栓やプラークで閉塞して脳梗塞となるものです。「塞栓性」とは心臓や大動脈、頸動脈からの塞栓子が頭蓋内動脈を閉塞することによって脳梗塞を生じるものです。「血行力学性」とは頭蓋内外の動脈に狭窄や閉塞があることで血流障害が起こり、そこに血圧低下、高度徐脈、脱水などを伴うことで脳梗塞を生じるものです。 このように虚血性脳血管疾患は、それぞれの原因によって脳血流量が著しく低下し、不可逆的な障害に陥る疾患です。障害部位によってさまざまな神経脱落症状が起こり、後遺症として残ってしまうこともあります。血液透析患者と脳血管疾患脳血管疾患の病態脳血管疾患を併せもつ透析患者の看護樋口恵子ひぐち・けいこ 昭和大学保健医療学部看護学科講師/昭和大学横浜市北部病院看護次長村田千夏むらた・ちなつ 同講師/昭和大学横浜市北部病院2

元のページ  ../index.html#10

このブックを見る