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透析ケア 2021 vol.27 no.4 (359) 631出血性脳血管疾患 出血性脳血管疾患の代表的疾患である、くも膜下出血などの脳出血のおもな症状は、突然の激しい頭痛、嘔吐、意識障害、頸部痛や項部硬直などが挙げられます。とくに頭痛は「ハンマーで殴られた痛み」などと表現されるような激しい痛みといわれています。血液透析中には抗凝固薬を使用するため出血傾向となりやすいので、脳出血の症状出現には十分に注意が必要です。2虚血性脳血管疾患 一方、虚血性脳血管疾患の代表的疾患である脳梗塞のおもな症状は、皮質症状といわれる意識障害、失語、失行、失認、同名半盲や片麻痺、感覚障害などです。患者の動きが突然緩慢になる、指示動作ができないなどの麻痺を疑う症状がみられたら、脳梗塞の初期症状かもしれません。とくに脳梗塞は透析中から終了後6時間以内の発症が多いといわれています。それは除水に伴う血圧低下や透析後の坐位—起立時の起立性低血圧による脳血流低下の影響が原因として考えられるからです。脳梗塞の既往がある患者は、透析が終了して帰宅後などに再梗塞を起こすことも考えられるので、患者や家族へ説明し注意を促すことも必要でしょう。1血液透析中の看護透析による脳血流量の低下 血液透析開始時は、血液を血管から毎分200mL程度の速度で取り出して人工腎臓のフィルタ(ダイアライザ)で濾過を行います。透析中は体外に血液を取り出すことで、体内は一過性の虚血状態となり、循環血流量の低下、血圧低下を来すことで脳血流量の低下も起こしやすくなります。とくに糖尿病を有する患者は透析低血圧を起こしやすいため、リスクは高まります。 脳血管疾患患者にとって脳血流量の低下は、脳梗塞の再発や一過性脳虚血発作などをひき起こす要因の一つになります。また、透析中の急激な血圧低下時に、血圧低下に先行して脳血流が減少することから、脳血流を一定に保つ機構(自動調節機構)の障害が、脳梗塞の一因として関与しているともいわれています。観察のポイント これらのことからも、血液透析中の再梗塞などのリスクを考え、脳血管疾患患者の透析開始時はモニタリングによる継続的なバイタルサイン測定や意識レベルの確認、全身状態の観察(呂律障害、四肢のしびれ、脱力感、めまい、頭重感など)が重要になります。また、全身倦怠感や疲労感、眠気、嘔気・嘔吐などの迷走神経反射の出現にも注意が必要です。脳血管疾患のおもな症状血液透析患者の看護のポイント

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