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末期腎不全時の身体の状態 慢性腎臓病(chronic kidney disease;CKD)が進行して腎臓の機能が低下すると、腎不全となります。通常、腎臓のはたらきが健常人の15%未満(CKDステージG5)になることを末期腎不全といいます。腎臓には老廃物を体外に出す以外に、水分や電解質(ナトリウム、カリウム、クロール、カルシウム、リンなど)の調節、血圧を調整する酵素や赤血球をつくるよう骨髄にはたらきかけるホルモン(エリスロポエチン)などの産生機能があるため、これらの機能を喪失すると、生命にかかわるような深刻な状態になります。 末期腎不全になると老廃物を濾過して尿をつくることができず、体内に老廃物が蓄積します。これらの老廃物は尿毒症毒素といわれていますが、現在のところ、尿毒症毒素がどのようにして症状をひき起こしているのかは不明です。尿素やクレアチニン、各種蛋白代謝産物を含む約150種類の物質が尿毒症毒素に該当すると考えられています1)。尿毒症は全身の臓器障害で、腎臓の機能低下によって体内に蓄積した尿毒症性物質による症状と、腎臓で産生・活性化される物質の減少による症状とに分けられます。尿毒症性物質による症状 はじめは疲れやすい、体がだるいなどの症状が出現し、さらに、身体の浮腫や咳、呼吸困難、胸に水が溜まる尿毒症性肺などの症状が現れます。また、起床直後の悪心や嘔吐、食欲が低下して何かを食べようと思っただけで気持ちが悪くなるような消化器症状を認めます。そのほか、倦怠感、衰弱感ないし悪寒を生じ、精神状態も変化します。最初はちょっとした性格の変化が起こりますが、ついには錯乱、さらには昏睡に至るような精神神経症状を認めることもあります(図)。Special Edition川かわい・とおる合徹 中央内科クリニック院長腎代替療法が必要な末期腎不全はどんな状態?~尿が出なくなることで生じる尿毒症症状~320 (316) 透析ケア 2021 vol.27 no.4

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