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透析患者における脳・心血管合併症 透析患者では、脳血管障害、心疾患、血管疾患の合併リスクは約40倍高いとされています。本邦における透析患者の死亡原因は、心臓突然死が16%、うっ血性心不全が10%、脳血管障害が10%、心筋梗塞が8%と報告されています1)。心臓突然死の多くは不整脈が原因と考えられますが、その基礎疾患として虚血性心疾患や心臓弁膜症によるうっ血性心不全と冠動脈疾患、電解質異常(低/高カリウム血症・低マグネシウム血症・低カルシウム血症)が重要です。脳血管障害死は海外の透析患者に比較して依然として多いのが現状で、脳出血から脳梗塞へと移行する傾向にあります。以下に、脳・心血管合併症が起こる原因を解説します(図1)。高血圧 透析患者における高血圧の原因は、①食塩過剰摂取、②レニン・アンジオテンシン・アルドステロン(renin—angiotensin—aldosterone;RAA)系の亢進、③交感神経系亢進の3要因が互いに影響することによって起こると考えられています。その結果、透析導入時には80%以上の患者が高血圧を合併しています。そのため、透析患者の食塩摂取制限は高血圧治療として理にかなっています。食塩摂取制限は、ほかの2要因も抑制します。動脈硬化1.アテローム動脈硬化 動脈硬化はアテローム動脈硬化とメンケベルグ型動脈硬化に分類されます。アテローム動脈硬化は酸化ストレス、機械的ストレスあるいは炎症性ストレスによる血管内皮傷害にはじまります。血管内皮が傷害を受けるとその表面に組織因子(第Ⅲ因子)、トロンビン受容体、細胞接着因子(ICAM—1、VCAM—1、セレクチンなど)などが発現し、単球と接触しやすい状況となります。血管内皮に接触した単球は内皮下へ侵入してマクロファージに変化します。アテローSpecial Edition長はせ・ひろき谷弘記 青葉会青葉病院院長透析を続けることで生じる関連合併症 ①脳・心血管にまつわる合併症746 (342) 透析ケア 2021 vol.27 no.4

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