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142  消化器外科NURSING2017年秋季増刊Chapter3胆道の治療とケア はやわかり14.胆道の治療と治療後の観察ポイント② 胆囊摘出術(2)胆囊摘出術の合併症にはどのようなものがあるの?胆汁瘻 胆囊摘出術では、胆囊と胆管を連結している胆囊管を切断しなければなりません。胆囊管は、胆管、肝動脈、門脈などの脈管を包みこんでいる肝十二指腸間膜という膜の中の結合組織に埋もれています。このために、胆囊管を露出するには周囲の結合織から剝離しなければなりません。この際に、電気メスなどのエネルギーデバイスの熱で胆管を損傷してしまうことがあります。特に、胆囊炎の後で周囲結合織が厚い場合や、脂肪が多い場合には胆囊管の位置がはっきりしないために胆管を損傷する可能性が高くなります。熱で損傷した胆管が術中のみならず、時間をおいて術後に穴が開くことがあります。そうなると、胆管から胆汁が腹腔内に漏れて胆汁瘻となります。 胆汁瘻が起こると胆汁により腹腔内に炎症が発生して胆汁性腹膜炎となります。胆汁瘻は、胆囊の肝臓付着部(胆囊床)の剝離面にある細い肝内胆管からも起こることがあります。また、胆囊管の断端にかけたクリップや糸が術後に外れることで、胆汁が腹腔内に漏れて胆汁瘻が起こることがあります。さらに、胆汁瘻は肝臓の胆囊の剝離面である胆囊床から発生することもあります。術後出血 術後出血の原因は、胆囊を栄養する胆囊動脈の断端にかけたクリップまたは糸が外れてしまって発生することが主ですが、胆囊を剝離した胆囊床から出血することがあります。胆石の総胆管への落下による胆管炎・膵炎 胆囊内に小さな胆石がある場合、手術操作により胆囊または胆囊管内の結石が総胆管に落石して、胆道の十二指腸への出口である十二指腸乳頭部(筋肉で囲まれており、狭くなっている部分)にはまりこんでしまい、胆汁や膵液が十二指腸に出ていけなくなり、逆流して胆管炎や膵炎を起こすことがあります。腸管穿孔 特に、胆囊炎で周囲腸管(十二指腸・横行結腸)と胆囊が癒着している場合には、これを剝離する際に腸管の漿膜を損傷して、術後に腸管穿孔を発生することがあります。胆汁瘻、出血、胆石の総胆管への落下による胆管炎や膵炎、また、まれに周囲の腸管(十二指腸・横行結腸)の穿孔があります(図1)。

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