消化器ナーシング 2020春季増刊 812章開胸・開腹手術結腸(右半・左半・S状結腸)切除術治療前のケアでは何が重要? ナースはどう動く? 腸管洗浄の必要性を説明し、低栄養状態に注意する術前には機械的腸管洗浄として、下剤を飲用します。腸管洗浄は、特に高齢の患者さんにとっては負担が大きい処置です。術後合併症である縫合不全を防ぐために重要であることを説明し、理解してもらう必要があります。また、入院時からがんによる便通異常や出血などが原因で、すでに低栄養状態あるいは貧血をきたしている場合が少なくありません。さらに比較的長期の食事制限を行う必要があることもあり、栄養状態の評価が重要です。治療後のケアでは何が重要? ナースはどう動く? 呼吸器・循環器系の合併症や出血、縫合不全、創感染に注意するどのような術式においても、特に術後早期は、厳重な理学所見およびバイタルサインのチェック、また水分バランスを検討し、水分過剰による肺水腫、心不全や、脱水・腎不全など呼吸器・循環器系の合併症に注意すべきです。結腸切除後は腹腔ドレナージの排液の量・性状の確認が重要であり(①血性→出血、②白色→リンパ漏、③便汁→縫合不全)、それらの変化によって、術後出血、縫合不全などに早期に気付くことができます(表1)。ドレナージチューブは腹腔内で発生したことの重要な情報源なので、屈曲、閉塞、固定位置のずれがないことなどにも注意します。また、患者の腹部を観察し、嘔気の有無、排便・排ガスの状況、腸蠕動音を確認します。術後の麻痺性イレウスや癒着性腸閉塞の発症に注意し、必要に応じて腹部X線など追加の検査を行うことができれば早期に対処することができます。さらに、創感染は他部位の手術に比べて大腸手術に頻度が高い合併症であるため、創部の発赤、腫脹、熱感の有無などの観察を心掛ける必要があります。引用・参考文献1)滝沢一泰ほか.ドレーン排液まるわかりノート.消化器外科NURSING.2016,21(6),30.(河野洋平、平塚孝宏、赤木智徳、白下英史、衛藤剛、猪股雅史)ドレーン排液の性状と合併症1)より転載表1①血性②白色④便汁排液の性状➡➡➡可能性の高い合併症出血リンパ漏縫合不全
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