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わが国のがんの統計によると、新規の年間がん罹患数は約100万人であり、毎年2万人弱増え続けています。そのうち、大腸、胃、肝・胆・膵、食道がんの罹患数は約42万人と、40%以上が消化器がんです。つまり、患者数だけをみても消化器がんの重要さがわかります。がん治療、特に消化器がんをはじめとする固形がんでは、完全に病変を取り除くことが基本的な治療戦略です。しかし、すべての患者さんで切除手術や内視鏡切除を適応することは難しく、転移例や再発例など多くの患者さんは、放射線療法や化学療法の非切除治療を受けることになります。がん治療において、新しい薬剤の登場は化学療法自体の治療成績の向上だけでなく、切除や放射線療法との併用などの適応拡大、安全管理システムの整備、個別化治療、がんゲノム解析、等々、大きく変わってきています。従来の「化学療法」から分子標的治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を含めた「薬物療法」の用語も定着してきました。がん診療は医師だけでなく、看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーなど、がん治療の包括的マネジメントが求められてきています。 今回、消化器がんに絞ったがん薬物療法のテキストとして、「臓器別 やさしい消化器がん化学療法・薬物療法」を出版することができました。薬物療法の専門家に、消化器がんの病態や治療方針、薬剤投与時の看護技術、主要32レジメン・薬剤ごとの副作用と対処、退院指導など、治療サポートに必要な知識をわかりやすく解説いただきました。消化器がん化学療法・薬物療法の基本からケアの要点まで、広く深く解説した一冊になったと思っています。本書を、忙しい日常業務のなかで、知識の整理と実際の診療の助けとしていただければ幸いです。 2020年8月杏林大学医学部 腫瘍内科学 教授 古瀬純司はじめに

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