章1消化器領域でみるドレーン・チューブのきほん章2術後ドレーンのきほん〜留置部位・術式・ケア〜章3内科的治療チューブのきほん〜目的・留置法・ケア〜章4排液からわかる合併症と正常・異常のみかた章5ドレーン・チューブ周辺の管理とトラブル対応ドレーン・チューブにまつわるケアのQ&A章6章6消化器ナーシング2021春季増刊163膵がんの術後に発症しやすい膵液漏を発症する代表的な手術として、膵がんに対する膵頭十二指腸切除術、膵体尾部切除術があります。また、膵臓周囲のリンパ節郭清を行う胃がんや胆道がんの手術においても膵液漏を生じることがあります。膵液漏の定義は、「ドレーン排液のアミラーゼ値が血清アミラーゼ値の3倍以上の状態が術後3日以上持続すること」とされています。ここでは、膵液漏が最も重篤化するケースが多い膵頭十二指腸切除術を施行した場合について解説します。膵頭十二指腸切除術では、膵空腸吻合部と胆管空腸吻合部の周囲をドレナージするために、多くの場合2本以上のドレーンが留置されます(p.164参照)。排液の性状膵液は無色透明ですが、膵液漏を生じた場合、ドレーン排液は薄い褐色の混じった「すすけた」色調となります。膵液漏が持続すると排液はワインレッド様(暗赤色)に変化します。その後、腹腔内感染を併発すると白濁した膿性排液となります。膵液漏が続いた後の「腹腔内出血」膵液は強力な消化酵素を含むため、この状態が続くと周囲の血管が消化されて仮性動脈瘤を形成します。仮性動脈瘤が破綻することで腹腔内出血をきたします。腹腔内出血が起こるとドレーン排液の性状は血性に変化します。膵液漏による腹腔内出血では、出血の1~2日前に予兆出血といわれる微量な出血を認める場合があります。膵液漏とは排液の性状と 変化
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