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3整形外科看護2017春季増刊整形外科病棟に勤務していて楽しいのは、痛みを訴えて入院した患者さんが笑顔で退院していくことと、入院診療のなかで看護師の観察・判断・処置などの比重がほかの診療科に比べて大きいことであると思う。例えば体位変換を間違った方法で行えば人工股関節の脱臼を生じるし、入浴介助でも手術内容を知らなければ縫合した腱板の損傷が生じる場合もある。整形外科手術では、手術成績の向上のためにはきっちりした看護やリハビリテーションが必須である。このように整形外科手術治療のなかで重要な役割を担っている病棟看護であるが、実際に勤務をしてみると、「自分の看護は正しいのか?」「なぜこの注意が必要なのか?」「この患者さんと前の患者さんとで異なる指示が出ているのはなぜか?」など多くの疑問がわいてくる。本書では、このような疑問を解消し、自信をもって病棟看護を行えることを目的に企画した。まず「疑問・質問」を把握するために全国1,000施設以上にアンケートを行い、整形外科病棟勤務での疑問を収集した。これにメディカ出版が主催する整形外科看護に関連する各種セミナーで寄せられた質問を加えて、手術部位や処置などで分類して質問項目を作成した。本書は整形外科の知識を体系的にまとめた「教科書」ではなく、臨床現場での、看護師の目から見た、疑問・質問に対する回答書を目指した。そのため、執筆項目について第一人者であることはもちろんであるが、「看護師の目」でも診療を見ることのできる医師を選ぶようにした。どの執筆者も看護師から挙がってきた「生の質問」に対して、エビデンスのあるものはエビデンスを明らかにして、エビデンスがはっきりとは報告されていないことについてはエキスパートオピニオンを、看護師にわかりやすく記載していただいている。各項目にはサマリーも掲載してあり、短時間で内容を把握することもできるようになっている。術後の処置は、それぞれの施設の伝統や術者の思い入れで異なる場合も少なくないし、症例によって変える必要のある処置もある。このように異なった処置についても、なぜ異なっているのかを知っていれば理解も深まると思われる。本書を活用して、第一級の整形外科病棟看護を実践してほしい。監修にあたって独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)大阪病院 副院長冨士武史
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