140 眼科ケア 2020年 秋季増刊網膜や脈絡膜の断面図を非侵襲的に短時間で取得できる検査である 後眼部の光干渉断層計(optical coherence tomography;OCT)は近赤外光を眼底に照射し、網膜や脈絡膜の断面図を非侵襲的に短時間で取得できます。通常の眼底検査では網膜を正面からしか観察できず網膜の層構造は確認できませんが、OCTは高い解像度で網膜や脈絡膜の断層像を取得できるため、「眼底のどの部位に、どのような異常があるか、その異常はどの層にあるか」を容易に観察が可能です。また、OCTは倒像検眼鏡や眼底カメラのようなまぶしさがなく、患者さんの負担が少ない検査です。現在の眼科診療において、OCTは網脈絡膜疾患や緑内障、視神経疾患などの診断や治療効果判定、経過観察に必要不可欠なツールです。 OCTの基本的な原理は超音波検査に似ています。2つ以上の光波が重なり合うことで互いに強めあったり、弱めあったりする現象(干渉現象)を利用し、測定光と同軸に戻ってきた反射波を画像として構築し、反射波の時間差は「空間的位置関係」、反射波の信号強度は「画像の濃淡」として画像化されます。また、B-scan画像(断層像)は「スペックルノイズ」と呼ばれる斑点模様に埋もれており、同一部位を複数回スキャンして画像シグナルを加算平均することでノイズを除去しています。加算平均の精度は同一部位でぶれのない多数のスキャンができるかに依存します。網膜の層別の厚みの定量化も可能である OCTでは断層像の取得だけでなく厚みの定量化が可能で、目的とする層の境界を検出するセグメンテーションという処理が自動で行われます。網膜全層厚、神経節細胞複合体(ganglion cell complex;GCC)厚、神経節細胞層+内網状層(GCL+IPL)、乳頭周囲網膜神経線維層(circumpapillary retinal nerve fiber layer;cpRNFL)厚などの定量解析があります。どのような検査?どのような検査?どのような検査?OCT検査20川崎医科大学附属病院眼科 視能訓練士後藤克聡 ごとう・かつとしWeb動画WebWebWeb動画動画Web動画
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