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酸素療法の新たなる時代へ! わが国で在宅酸素療法に社会保険適用がなされたのが1985年3月なので、在宅酸素療法の歴史も30年超になります。もちろん病院内ではそれ以前から酸素療法が行われていたのですが、当時から現在に至るまで急性期・慢性期・在宅を問わず、酸素療法のメインは低流量システムです(一部例外はありますが……)。したがって酸素投与指示の代表的なものは、例えば2L/minなどのように流量設定で行うことになります。ただこのシステムの場合、本編でも触れられていますが、同じ流量の酸素を吸っていても、患者の呼吸状態によって吸入酸素濃度が変わる可能性があります。呼吸不全の治療という観点から考えると、酸素投与の方法は流量設定ではなく、吸入気酸素濃度(FIO2)で行われるべきで、現に人工呼吸の世界では、ずいぶん前から酸素に関する設定はFIO2で行われてきました。また、より客観的な酸素化の指標としてP/F比が用いられることがありますが、この場合はやはりFIO2の設定が必要となります。まれに、酸素カニューラ使用下(当然、流量設定になりますが)での予測FIO2からP/F比を論じているケースがありますが、ほとんど意味がありません。ところが最近は酸素療法の世界で革新的な方法が普及しつつあります。それがハイフローセラピーです。該当する本編を読んでいただければわかると思いますが、この療法ではFIO2を設定するようになっており、これこそが本来の酸素療法なのではないかと思っています。さらにこの治療法を在宅にという流れも少しずつですがあるようです。個人的には、この治療法が広く普及・定着することで、酸素療法を実施するときの酸素投与指示が本来のFIO2になるのではないかと期待しています。 本書が『これからの酸素療法』を再考する機会になると同時に、今後この分野を担っていかれる皆様の一助になれば幸いです。はじめに石原 英樹竹川 幸恵医療法人徳洲会 八尾徳洲会総合病院 呼吸器内科 部長大阪府立呼吸器・アレルギー医療センター呼吸ケアセンター 副センター長/慢性疾患看護専門看護師 最後に、本書の編著者として校正(今流行の校閲ではありません)に関わらせていただいて気づいたのですが、各執筆者で酸素療法の目標・目安値の記載に少しばらつきがあるようで、読者の皆様の混乱を招かないかと危惧しております。そこで編著者の立場で以下のようにまとめさせていただきます。急性呼吸不全:SpO2 ≧ 90~94%慢性呼吸不全:SpO2 ≧ 90~92% これと本編を参考にして、最終的には施設ごとに基準値を設定していただければ幸いです。

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