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呼吸器ケア 2018 夏季増刊9839創傷被覆材は前述した皮膚保護材(→p.95)と同義に用いられることもありますが、ここでは創傷治癒を促すことを目的とするドレッシング材として記載します。従来、創傷管理はガーゼなどにより浸出液をドレナージする「dry dressing」により、痂皮形成を促す管理をしてきました。しかし、痂皮形成により組織壊死の進行や細菌繁殖などの創傷治癒に悪影響を及ぼすことがわかってきました。一方、湿潤環境下においては、創傷部の痂皮形成は起こらずに、浸出液中で上皮再生が促されることが明らかになり、適切な湿潤環境を維持できるドレッシング材で創傷部を被覆して治癒を促す「moist wound healing」という創傷管理が行われるようになりました。浸出液のコントロール、乾燥した創の湿潤環境の維持、感染防止、クッション性による外的刺激の緩和、交換時の疼痛軽減など、さまざまな目的で使用されます。真皮に至る創傷用、皮下脂肪組織に至る創傷用、筋・骨に至る創傷用に大別することができます。さらに使用目的により、①浸出液が少ない創面を閉鎖し、湿潤環境を維持するもの(ハイドロコロイドなど)、②乾燥した創面を湿潤させ、壊死組織の自己融解を促すもの(ハイドロジェルなど)、③余分な浸出液とともに細菌を吸収し、被覆材内部に閉じ込めるもの(アルギン酸塩、キチン、ハイドロファイバー、ポリウレタンフォームなど)、④銀イオンを含有し、浸出液に接触することで銀イオンが放出されて抗菌効果を発揮するものに分けることができます。この物品は何のためにあるの?どんな種類があるの?創傷被覆材エスアイエイドⓇ[提供:アルケア]皮膚との接着面にシリコーンゲルメッシュを用いており、浸出液や血液が網目状のゲル層を通過して吸収層へ至ることで、創傷部への固着を防止し、交換・剝離時に表皮角層や新生表皮へのダメージを軽減することができる。シリコーンゲルの密着性により、垂直面や下向き面など、さまざまな部位に容易に密着するため、貼付が容易に行え、貼付中のズレを軽減できる。吸収層はレーヨンとポリエステル不織布により構成され、浸出液が少ない真皮に至る創傷に用いられる
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