呼吸器ケア 2018 冬季増刊81章呼吸生理気道の解剖生理1北里大学医学部 新世紀医療開発センター 横断的医療領域開発部門 侵襲制御・生体危機管理医学(集中治療医学) 教授新井正康 あらい・まさやすIntroduction ここでは呼吸ケアと関連が深い、臨床的な気道の解剖・生理を中心に述べることとします。最初に気道の解剖と生理を述べ、次にこれらの呼吸ケアとの関連、注意点について整理しました。気道の解剖と生理は切り離せない場合があるので、部位ごとにその両方について記述しました。また、特定の職種だけに限らず、呼吸ケアチームとして共有するべき内容としました。気道の定義 解剖学的に呼吸器系は気道と肺からなっています。気道とは鼻腔、咽頭、喉頭、気管および気管支をいいますが、気管支以下の肺胞囊までも気道に含める場合もあります。口腔は本来、消化器系の一部ですが、呼吸ケアでは気道確保、気管挿管、吸引の操作と深く関連するため、ここでは気道に含めて述べることにします。気道の各部位における解剖と生理1.鼻腔と副鼻腔鼻は前方から外鼻孔、鼻前庭(鼻毛の分布する部位)、鼻中隔、鼻腔があり、鼻腔の後ろは後鼻孔で上咽頭につながっています。鼻腔内は、上中下の鼻甲介という高まりにより区画されています。鼻腔は気流の通路で、吸気の加温加湿作用があります。また、鼻粘膜は線毛構造をもつ粘膜で覆われていて、線毛は異物が咽頭方向に除去されるように動きます。鼻中隔前部の粘膜下には静脈叢があり、ここはキーセルバッハ部位と呼ばれる鼻出血の好発部位です。
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