130171951
15/16

4章2章3章1章在宅導入の適応判断と設定のポイント1みんなの呼吸器 Respica 2019夏季増刊161加えて、骨格筋緊張の低下するREM睡眠時は呼吸補助筋が働かず、ほとんど横隔膜のみの呼吸となってしまうためです。慢性呼吸不全患者は安静覚醒時においてさえもいろいろな呼吸筋を総動員して何とか換気を保っていますが、より低換気になる睡眠時(特にREM睡眠時)はそのキャパシティーを超えて低酸素・高二酸化炭素血症になってしまいます。もともと高二酸化炭素血症は、換気機能が低下した慢性呼吸不全の患者において、少ない換気量で二酸化炭素をより効率的に排出できるようになる一種の生理学的適応であると考えることもできます(肺毛細血管と肺胞の二酸化炭素分圧較差が大きい方が、二酸化炭素がたくさん肺胞に移動できます→図1)。実際に古い報告6)では、肺結核後遺症症例のみですが、LTOT(長期酸素療法)導入時にPaCO2が45mmHg以上であった群の方が、それ未満の群よりも生命予後が良かったとされています。ただ、だからといって限りなくCO2が高い方がよいのかといわれるとそういうわけでもなく、実際LTOT導入後に高二酸化炭素血症が徐々に進行していく症例は日常的によく経験しますが、CO2が上昇するにつれて日中の眠気やいらいら感、疲労感、性格変化など、さまざまな臨床症状を生じ、また、急性増悪もきたしやすくなることが知られています。足りないもの(低酸素)は補えば(酸素投与)よいのですが、過剰なもの(高二酸化炭素)はより効率的に排出しなければなりません。ここで登場するのが換気を補助するNPPVなのです。高二酸化炭素血症は体に悪いか?図1 換気機能の比較PCO2≒0mmHgPCO2≒0mmHg健常人Ⅱ型慢性呼吸不全40mmHg60mmHgPCO2=40mmHgPCO2=60mmHg健常人では1回の換気で二酸化炭素が40mmHgしか排出されません。Ⅱ型慢性呼吸不全の患者で、PaCO2が60mmHgまで上昇しているとすると、1回の換気で二酸化炭素が60mmHg排出されます。このように毛細血管と細胞内の二酸化炭素分圧較差が大きいほど、二酸化炭素はより効率的に排出されます。

元のページ  ../index.html#15

このブックを見る