074みんなの呼吸器 Respica 2020夏季増刊Column現場からの質問タイム 人工呼吸のモードにはさまざまな種類があり、一つずつ覚えるのは大変苦痛ですよね。いちいち覚えていられないというのが本音です。しかし、このA/C(補助/調節換気)と SIMV(同期的間欠的強制換気)はしっかり勉強しましょう。 これらは強制換気を行う際の換気サイクルを決める方法ですが、どちらも自発呼吸がない場合にはまったく同じ換気モードになります。このため、筋弛緩下など自発呼吸がない場合にはどちらであったとしてもまったく差はありません。 問題は自発呼吸が出てきた場合です。A/Cでは出てきた自発呼吸のすべてをトリガーし、強制換気を補助することになりますが、一方でSIMVは、自発呼吸すべてに対し強制換気を作動させません。SIMVではもともと規定された呼吸数の分だけを強制換気で補助し、残りは自発呼吸のまま、もしくはプレッシャーサポートのみの補助とします。このため、自発呼吸が多い、いわゆる頻呼吸の状態ではA/Cはすべてを強制換気にするため呼気時間がほとんどとれなくなってしまう場合があり、とても安定して呼吸ができるとはいえません。一方で、SIMVは自発呼吸が増えたとしても強制換気が入る回数に制限があるため、管理しやすくなります。 例えば状態が安定した患者では、意識下での人工呼吸管理となりますが、患者が何かをしゃべろうとした場合に頻呼吸と同様のことが起こります。そのような状況をSIMVでは比較的許容でき、A/Cではできません。このため、急性期を脱してある程度安定した患者ではSIMVが使いやすいことがあります。 逆にA/Cが重要となるのはより急性期の重篤な場面です。そもそも急性期の重症例では、頻呼吸になっていることそのものを許容してはいけません。十分に全身管理を行い、頻呼吸の状態を整える必要があります。頻呼吸を許容しないA/Cにしておくことで、十分なモニタリングができるようになり、より厳密な管理を行えるようになります。 SIMVもA/Cも共に現在の呼吸管理にはなくてはならないモードです。上手に使い分けることが大切でしょう。(横山俊樹)2CHAPTER換気設定で必ず使う機能を完全マスターA/CとSIMVってどう使い分けるの?Q.
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