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1.歩数計を持っての歩行がおすすめ 運動をおすすめするときは、まずそのハードルを下げることが重要です。運動に対して「きつい」「大変」「時間がかかる」などのイメージをもっている患者さんが多く、そのハードルが単なる思い込みであることを伝えられるとよいでしょう。 最初にかならずやってほしいのは、「歩数を測る」ことです。歩数計を持つだけで、意識的になりおおよそ歩数が2,500歩くらい増えるのではないか、というようなエビデンスもあります1)。また、耐糖能異常(impaired glucose tolerance;IGT)に対する介入試験では、1日30分の歩行よりも、ほぼ同じ価値がある3,000歩の歩行量の増加を、歩数計を持って測りながら目指したほうが、アドヒアランスが高かったことが示されています2)。これは、歩数であれば「具体的に目標がどれくらい達成されたか」いつでも確認できることがメリットになったからだと思います。 「時間で目標値を決める」というやり方は、高齢で時間に余裕があり、定時に運動できるような人には有効であると感じますが、忙しくてなかなかそのような時間が取れない人には歩数で目標値を決めるほうがよいように思います。2.膝の痛みがある場合 取り組む種目としては、歩行がもっともポピュラーでやりやすいでしょう。ただ、問題になることの一つが患者さんの膝の痛みです。「歩くと膝が痛い」というのが、阻害要因になることをしばしば見受けます。 そのときにおすすめしている運動は、「自転車」です。自転車は体重が免荷されるため、膝への負担が少なく痛みも軽減します。また、運動の種類がちがっても強度が同等であれば、同じ時間その運動をすることで同じ効果が得られると考えられます。自転車もふつうに漕いでいれば、歩くのとだいたい同等の強度になる場合が多いため、運動として悪いものではありません。目標値を設定するにあたっては、たとえば「10分漕いで1,000歩」というカウントをすればよいと思います。ただ、自転車の難点は、「目的地まですぐについてしまう」ということです。「近くまで行くときは歩きで」という原則は守りつつ、自転車に乗って近い目的地に行く場合はすこし遠回りする、などを助言すると、活動量はより高まると思います。 169ページのグラフは、糖尿病患者さんに対する監視下の有酸素運動がどれくらい血糖値を下げるかという前向きの介入試験結果の平均値です。週に約150分でHbA1cは約0.7%程度低下しています。筆者が日割りの数値として、約20分、2,000歩という目標値を提示させてもらいました。これだけの運動で0.7%低下するかどうかはまだ十分に検証されていませんが、期待値としては提示し運動は何をやったらよいの?プラス20分でどれくらい血糖値が下がるの?170糖尿病ケア 2016 春季増刊解説ページ

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