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糖尿病ケア 2019年春季増刊40インスリンの生合成 2型糖尿病は、膵β細胞におけるインスリン分泌能の低下と全身のインスリン抵抗性によって発症するといわれています。糖尿病を発症した時点で、膵β細胞量はなんと健常人の約50%程度まで低下するとされています。本稿では、生体内で唯一血糖レベルを低下させるホルモンであるインスリンのはたらきに関して考えてみます。 まず、インスリンは膵臓のランゲルハンス島に位置するβ細胞という細胞でつくられます。ちなみに、ランゲルハンス島は膵臓の多くを占める外分泌線に浮かぶように存在し、膵臓の体部から尾部に多く存在するといわれています。また、ランゲルハンス島にはβ細胞のほか、グルカゴンをつくるα細胞、ソマトスタチンを分泌するδ細胞などがあり、いずれのホルモンもお互いに協調して血糖調節に関与しています。 インスリンは、前駆体であるプロインスリンが酵素によって切断され生成されます。切断されたインスリンではない部分はCペプチドと呼ばれ、これは外来性のインスリンの影響を受けないことから、内因性インスリン分泌能の指標として非常に重要と考えられています。インスリンとCペプチドで構成されるインスリン顆粒は、1つのβ細胞のなかに10,000~13,000個と多く存在し、食事などで上昇した血糖にすぐに反応し、細胞膜にドッキングして血液中に放出されます。インスリンのはたらき 血液中に放出されたインスリンは、さまざまな臓器で作用します。なかでも重要な臓器としては、肝臓、骨格筋および脂肪組織があげられます。1.肝臓での作用 肝臓には、食事由来のグルコースをグリコーゲンとして蓄える能力があります。空腹時には血糖値が下がりすぎないように、グリコーゲンからグルコースがつくられ血液中へ放出されます。だいたい数時間から一晩程度の絶食では、この肝臓でのグリコーゲンを利用してグルコースがつくられます。1日以上絶食の時間が続くと、肝臓のグリコーゲンは枯渴してしまいますが、じつは肝臓では新しく糖をつくるはたらき(糖新生)もありますので、血糖値が下がりすぎないしくみになっています。 肝臓におけるグリコーゲンの合成にはインスリンが必要であり、また前述のグルカゴンは糖新生に関与しているといわれています。2型糖尿病患者では、肝臓でのインスリン作用が低下することによってグリコーゲン合成が低下し、一方でグルカゴン分泌が増えてしまうことで血糖値が高いのにもかかわらず糖新生が起こってしまうため、高血糖をさらに助長してしまうことになります。解説

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