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糖尿病ケア 2019年春季増刊412.骨格筋での作用 骨格筋に関してですが、インスリンが骨格筋のインスリン受容体へ作用すると、グルコースを骨格筋に取り込むために必要な4型糖輸送担体(glucose transporter 4;GLUT4)が細胞内から細胞の表面に移動してくることがわかっています。これにより血中のグルコースが骨格筋に取り込まれるのです。 また、機序は異なりますが、運動によってもこのGLUT4が細胞の表面に動員されるため、血糖降下につながることが知られています。インスリン作用が低下してしまうと、骨格筋に糖が取り込めなくなるので、高血糖をきたします。3.脂肪組織での作用 最後に、脂肪組織に関してですが、インスリンは脂肪合成に関与しています。インスリンの作用が低下すると、脂肪組織から多量の遊離脂肪酸が血液中に放出されてしまいます(脂肪分解)。肝臓で処理しきれない遊離脂肪酸はケトン体になり、糖尿病ケトアシドーシスの原因となります。インスリン抵抗性とは 脂肪細胞(おもに白色脂肪細胞)では、余剰エネルギーを中性脂肪として蓄えるはたらきがあります。過食でエネルギー摂取が多くなると、脂肪細胞が肥大化し、いわゆる肥満の状態になります。肥大した脂肪細胞からは腫瘍壊死因子-α(tumor necrosis factor-α;TNF-α)、インターロイキン-6(interleukin-6;IL-6)、遊離脂肪酸などの炎症に関連する物質が血液中に放出され、それらが各臓器におけるインスリン作用を妨げることがわかっています(インスリン抵抗性)。また、肥満や炎症が起こると、脂肪組織から生成される善玉物質のアディポネクチンが減ってしまうこともわかっており、上記の炎症性物質と相まって、慢性炎症におけるインスリン抵抗性をさらに悪化させてしまうと考えられています。 日本人は欧米人に比べると膵β細胞量が少ないといわれており、軽度の肥満でもインスリン抵抗性が惹じゃっ起きされることで糖尿病を発症するリスクが高まります。そのため、日頃の食事や運動により体重が増えないように管理することがとても重要です。●引用・参考文献1)春日雅人編.糖尿病学イラストレイテッド:発症機序・病態と治療薬の作用機序.東京,羊土社,2012,309p.2)日本糖尿病学会編.“血糖調節機構とその異常”.糖尿病専門医研修ガイドブック.改訂第7版.東京,診断と治療社,2017,26-54.1第   章糖尿病のしくみ7インスリンのはたらき

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