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糖尿病ケア 2020年 春季増刊19膵臓ってなにをするところ? 膵臓のはたらきには、消化酵素を腸管内に分泌する「外分泌」とホルモンを血液中に分泌する「内分泌」の2つがあります。膵臓が分泌する消化酵素にはたんぱく質を分解するアミラーゼとトリプシノーゲン(十二指腸に出てトリプシンに変換される)、脂肪を分解するリパーゼがあります。これらは消化管で栄養を吸収するために重要な分解酵素で、外分泌細胞から分泌されます。 膵臓の内分泌細胞は膵ランゲルハンス島(膵島)に集積しています。α細胞、β細胞、δ細胞、ε細胞などがあり、血糖に関連するものとしてインスリンはβ細胞から、グルカゴンはα細胞から血中に分泌されて血糖コントロールを行います。グルカゴンには、全身にエネルギーとして送り出すために血液中のグルコースを増やし血糖値を上げるはたらきがあります。インスリンってなに? インスリンは「体内で唯一の血糖値を下げるホルモン」といわれているため、血糖値を下げるはたらきをすると考えがちです。もちろん、現象として血糖値は下がりますが、糖尿病の病態を理解するにあたり重要なのはそこではありません。 体内のすべての細胞は、活動をするためにエネルギーを必要とします。細胞活動のためのエネルギーは細胞内でつくられますが、エネルギーのもとになるのは基本的にブドウ糖なので、細胞は血液中のブドウ糖を細胞内に取り込む必要があります。また、脂肪細胞や肝臓、筋肉では、必要時にいつでもエネルギーのブドウ糖を補給できるように、ブドウ糖を脂肪やグリコーゲンとして蓄えています。エネルギー(蓄え)としてブドウ糖を細胞内に取り込むにはインスリンが必要です。そのため、インスリンのはたらきは「血糖値を下げるホルモン」と考えるより「細胞活動のためのエネルギー利用に必要なホルモン」と考えるほうが、病態理解のためにはわかりやすいです。糖尿病でインスリン作用が減って血糖値が上がっている状態は、すなわち血管内にエネルギーはたくさんあるけれども、細胞が栄養失調に陥っているということです。❶❷糖尿病のきほん第1章

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