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糖尿病ケア 2020年 春季増刊107血糖パターンマネジメントとは 血糖パターンマネジメントは、1回の血糖測定で得られた血糖値を「高い」「低い」と判断するものではありません。患者の血糖値の記録と、患者の生活パターンの傾向を照らし合わせて分析し、インスリン製剤だけでなく、すべての糖尿病治療における調整を行うことです。 患者の血糖値の記録をみるときは、「24時間」「各食事前」「眠前」「数日間」「週単位」「曜日」「週末」「1か月」「季節」といった期間で確認します。もし、1か月間の血糖値の記録がある場合は、低血糖は青、高血糖は赤で数値を囲んでみてください。たとえば、学生の場合は4時限目に体育がある曜日の昼食前血糖値が低かったり、平日勤務のサラリーマンの場合は金曜日の夜に過食をした結果、毎週土曜の朝食前血糖値が高かったりします。患者も一緒に自身の血糖値と生活をふり返ることで、低血糖の補食対策や食事の見直しといった、その人に合った生活調整支援をすることができます。血糖値をただの結果ではなく、「その人の生活」だととらえることが、血糖パターンマネジメントの基本です。血糖変動の要因 糖尿病患者の血糖値は、①体、②食事、③活動、④薬剤、⑤そのほかの影響を受けて変動します。ここでは①~④のおもな要因について述べていきます(105ページ)。●体 体脂肪量の増加、骨格筋量および筋肉機能低下により血糖値は上昇します。それは、インスリンが効きにくい体質になるためです。肥満やサルコペニアの患者が該当します。月経、シックデイ、感染症、睡眠不足、身体的ストレスのときも、ホルモンの影響で血糖値は高くなります。一方、体脂肪量の低下、骨格筋量増加および筋肉機能向上により血糖値は降下します。減量や運動成果があった患者が該当します。腎不全患者も体内のインスリン分解・排泄が減るため、インスリン製剤の効果が残存し、血糖値は低下しやすいです。妊娠時は食前血糖値が低くなりやすく、妊娠週が進むとインスリンの効きが悪くなります。胃切除術後や肝硬変患者は、食前低血糖・食後高血糖になりやすいです。●食事 食事で血糖値が上昇する要因は、過食、間食、糖質摂取過多、糖質成分の多い清涼飲料水やアルコール、早食い、経腸栄養剤の投与です。食事で血糖値が降下する要因は、少食、❶❷糖尿病の治療とケアのきほん第2章

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