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糖尿病ケア2020年 秋季増刊64は大きくなります。■3糖質制限食 減量目的などで、糖質制限食を自己流で実施している人が多くみられます。極端な糖質制限食(糖質50g/日以下)は、穀類やめん類、いも類などの糖質を多く含む食品をすべて抜き、その分のエネルギーをたんぱく質と脂質で補います。肥満の2型糖尿病患者が多い欧米では、糖質制限による短期間の減量効果が報告されており、個々の患者に合わせて糖質量を調整する糖質制限食を導入する場合があります。しかし、糖質をカットしたエネルギー分を脂質やたんぱく質から補充しないと、エネルギー不足が起こり、肝臓や筋肉に貯蔵されているグリコーゲンが枯渴します。さらに、筋肉を分解してアミノ酸からブドウ糖を産生する糖新生が起こると、筋肉量が減少し、高齢者などではサルコペニアのリスクが高まります。 また、糖質が不足すると脂肪組織に蓄積されている中性脂肪が分解され、放出された遊離脂肪酸からケトン体が産生されてケトーシスをきたすおそれがあります。遊離脂肪酸が増加すると、インスリン抵抗性が増加します。動物性脂質や動物性たんぱく質の過剰摂取は動脈硬化を進展させ、過剰な動物性たんぱく質の摂取は腎機能に悪影響を与えるリスクも否定できません。したがって、現状では糖質制限の長期的な遵守と安全性についてのエビデンスはまだ十分といえません。脂質と血糖変動 脂質は消化に時間がかかるため、脂質の多い食事をとるとゆっくりと血糖値が上昇し、数時間以上血糖値の高い状態が続きます。そしてインスリンやグルコース依存性インスリン分泌刺激ポリペプチド(glucose-dependent insulinotropic polypeptide;GIP)の分泌が持続することにより、脂肪細胞として蓄積されて肥満につながります。とくに、コロッケやてんぷら、スナック菓子、洋菓子などの糖質と脂質を多く含んだ食品を摂取すると、高血糖が長時間持続するため注意が必要です。 しかし、炭水化物の前に適量の脂質を摂取した研究では、食後の血糖上昇を抑え、血糖変動を抑制する効果が報告されています3)。油脂はインスリンとGIPを分泌させ、血糖上昇を抑える効果があるからです。たんぱく質と血糖変動 ダイエットなどにより栄養のバランスがくずれ、エネルギーやたんぱく質の摂取量が不足すると、骨格筋を分解してアミノ酸からブドウ糖を産生します。また、高齢者ではたんぱく質の吸収率が低下しているため、エネルギーの15~20%をたんぱく質で摂取しないと、筋肉量が減

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