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糖尿病ケア2020年 秋季増刊16高血糖の原因 糖尿病は、前項のような血糖値の調節がうまくいかずに、慢性的な高血糖状態が持続してしまう代謝性疾患です。血糖値が高くなるもっとも大きな原因は、インスリンの作用不足にあります。すなわち、それはインスリンの分泌障害やインスリン抵抗性が高くなるという病態です。インスリン分泌不足■11型糖尿病におけるインスリン分泌不足 まず、インスリンの分泌が不足する機序について説明します。インスリンは膵β細胞で合成され、血糖値の上昇を感知して分泌されますが、膵β細胞が何らかの原因で破壊されてしまうとインスリンをつくりだすことができなくなり、インスリンの不足を生じます。 その原因はこれまでさまざまに報告されていますが、膵β細胞がほぼ完全に破壊され、絶対的にインスリンが欠乏して発症する1型糖尿病では次のように考えられています。1型糖尿病の成因には自己免疫性のものと、非自己免疫性である特発性のものがあります1)。自己免疫性では、本来ウイルスなどの外敵から自分の体を守るために機能している免疫反応が、暴走して自己の細胞を攻撃してしまうことで、膵β細胞が破壊されて生じます(図1)。■21型糖尿病の発症様式分類 ちなみに、1型糖尿病は膵β細胞が破壊されるスピードによって、それぞれ「劇症」「急性発症」「緩徐進行」の3つに分類されています。劇症1型糖尿病では、糖尿病症状発現後1週間前後以内で膵β細胞がほぼ完全に破壊され、インスリンの完全枯渴に陥ります2)。急性発症1型糖尿病ではおおむね3か月以内に3)、緩徐進行1型糖尿病では3か月以上、ときには年単位の経過で膵β細胞が破壊されることで発症します4)。最近では抗がん薬として用いられるようになった免疫チェックポイント阻害薬の免疫関連有害事象として、同じく膵β細胞が破壊され、劇症2糖尿病患者の血糖値が高くなるしくみ大阪医科大学内科学Ⅰ教室糖尿病代謝・内分泌内科助教/笹川明子(ささがわ・あきこ)大阪医科大学内科学Ⅰ教室糖尿病代謝・内分泌内科講師/寺前純吾(てらさき・じゅんご)第1章高血糖・低血糖が全身に与える影響

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