京都府立医科大学大学院 医学研究科 内分泌・代謝内科学 講師山﨑真裕 やまざき・まさひろ1.血糖のはたらき 糖尿病の話でかならず出てくる「血糖」とは何でしょうか。血糖とは、血液中のブドウ糖です。「血糖値」とは血液中のブドウ糖の濃度です。 では、血液中のブドウ糖の役割は何でしょうか。全身のすべての細胞は、その役割を果たすためにエネルギーが必要です。すべての細胞のエネルギー源はブドウ糖なのです。ブドウ糖は血流にのって体のすみずみまで運ばれます。ブドウ糖を使って脳は考え、筋肉は動きます(図1)。2.インスリンのはたらき 食事をしたときに消化管で吸収されたブドウ糖は、そのすべてが門脈をとおり、いったん肝臓に運ばれ、一部はグリコーゲンとして肝臓に蓄えられます。そのときに必要なのが膵β細胞から分泌されるホルモンの「インスリン」です。インスリンは血糖値を下げるホルモンというよりも、筋肉などでブドウ糖をエネルギーとして使用するため、余ったブドウ糖を筋肉、肝臓でグリコーゲンとして蓄えるために必要なホルモンで、「その過程で細胞内にブドウ糖が取り込まれ、血液中のブドウ糖濃度が下がる」と考えるとわかりやすいでしょう。3.血糖とインスリンの関係 肝臓でのグリコーゲンの貯蔵量は約100g(400kcal)です。これは8時間程度のエネルギーの貯蔵量なので、空腹時間が長くなりインスリンの分泌が抑えられた状態が続くと、グリコーゲンが分解され、また筋肉、脂肪から分解されたアミノ酸、遊離脂肪酸、ケトン体が血中に放出されて肝臓で糖新生が行われ、血中ブドウ糖濃度を上げようとします。インスリンは細胞が血Q1 血糖とインスリンのはたらきと、その関係は?糖尿病の病態・検査値糖尿病の病態生理がばっちりわかるQ&A116 (300 ) 糖尿病ケア 2021 vol.18 no.4
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