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 「糖尿病はヴァーチャルな病気だ」というのは、養老孟司先生の名言です(石井均.病を引き受けられない人々のケア.医学書院,2015,47-70)。多くの場合、「糖尿病患者」は、糖尿病を「病気」としてとらえていません。患者は自覚的な症状がない場合が多いからか、あまり気にしていません。患者にとっては検査の際に数値上で「糖尿病にされてしまう」という感覚です。このような受動的な体験であるにもかかわらず、突然、「食事・運動療法の必要性」や「合併症の危険性」を説明され、その日から「糖尿病療養生活」への「行動変容」を求められます。ここに、医療者と糖尿病患者のあいだには、大きなギャップが生じています。 この「患者説明シート」は、この糖尿病患者と医療者のギャップをできるだけ少なくするために、「見える化」をはかったものです。とくに、今回の糖尿病ケア2021年春季増刊は、ステップ1「初診患者用」、ステップ2「再診・中断患者用」、ステップ3「合併症・併存疾患をもつ患者、重症化予防をする必要がある患者用」と、糖尿病人生を3つの段階に分けています。そして、エキスパートの先生から「あと一押しの決めゼリフ」をいただきました。目の前の患者の行動変容にすこしでもお役に立てれば幸いです。 最後に、コロナ禍の超ご多忙ななか、ご執筆いただいたわが国のトップランナーの先生に深謝申し上げます。2021年1月大阪市立総合医療センター糖尿病・内分泌センター長/糖尿病内科部長細井雅之はじめに

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