Nursing BUSINESS 2018 秋季増刊3 超高齢化、人口減少が進む中、患者像が変わりつつあります。キーワードは「生活」です。複数の疾患や慢性疾患を持つ人が増え、医療機関にかかる人の多数を占めています。この人たちの願いは「今までと同じ生活をしたい」ということであり、病院に長くいることではありません。そして慢性疾患であっても時に悪化したり急変したりで、生活圏の中で在宅療養と入院を行き来することになります。 こうした患者(療養者)を看護師が支え、地域包括ケアを強化していくうえで欠かせないのが、多職種との協働です。患者の情報をベースとし、各職種が専門性を発揮して課題解決にあたりますが、このとき単に情報を共有するのではなく、「統合させる」という感覚が必要です。 よくいう「連携」だけを追い求めていては患者が宙に浮いてしまいます。自分が行ったケアで終わりではなく、他のチームがそれによってどう動いたかまで、皆が患者のゴールとして知っておくべきであり、それが「統合する」ということです。そのためには対話が必要で、ITで情報を渡すだけでは足りないのです。 現在は看護師、薬剤師、介護福祉士など、それぞれの職種が別々に記録を書いていますが、今後課題となるのは、共有する情報をどう記載し、整理していくかということです。誰もが共有できる情報と仕組みが必要なのです。在宅療養から入院の間では、とくに看護師とケアマネジャーや介護福祉士との情報共有がメインになり、共通目線を持つことと記録の標準化が望まれます。 標準化というと、個別性の逆をいくようですが、地域包括ケアシステムも紙ベースのアナログ処理で行うだけではなく、未来に向けてどのようにデータを取るかということを考えておかなければ質の点で発展しません。未来に向けてデータをどのように集めていくかを考えておく必要があります。病院では日本看護協会のDiNQL(ディンクル)事業が広がりつつあり、データの収集とベンチマークによる共通目線での評価が始まっています。在宅療養と入院のサイクルの中で患者情報をつなぎ、ケアの質を高めるための看護記録のあり方を考えていきましょう。2018年9月 坂本すが
元のページ ../index.html#3