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 「入院後、提供している医療・看護が、患者の望んでいた人生を遮断していませんか?」 こんな過激な発信から、この増刊号は始まります。 あなたの病院で提供している退院支援は、誰のためですか? 患者の笑顔に出会えていますか? 2002年、筆者が訪問看護の経験を生かして、大学病院で在宅移行に取り組み始めた頃、多くの医療機関では医療ソーシャルワーカー(以下、MSW)が孤軍奮闘して、退院困難(この表現がそもそも医療者目線ですが)になった患者に対する転院調整や、「おうちへ帰りたい」と言える患者・家族に対する社会保障制度・社会資源を活用しての在宅移行調整を実践していました。 看護師として、MSWが支援する患者の医療情報や入院中の医療・看護の経過をカルテから読み取り、分析していく中で、いくつかの課題が見えてきました。 ①入院決定時に、入院医療を提供しても、入院前のように自立した生活は送ることができない可能性があることは、予測できたのではないか? ②入院前までは自立していたのに、ベッド上安静臥床を強いていることで、おむつ内排泄になり、禁食により食べる力も喪失してしまい、「自宅退院は無理」と医療者が判断していることが多いのではないか? ③入院医療によるゴール・目指す状態像は、入院時や治療の節目で、患者・家族と共有できていたのだろうか? 患者自身のこれからの生き方、病を持ちながら人生を生ききることに伴走した医療、看護、そして意思決定支援ができていない病院の現状がありました。 この現状に対して、実践知を可視化して、「退院支援・退院調整の3段階プロセス」をつくり上げたのです。これは、入院決定時から看護師を中心にしたチームアプローチを行い、患者の望む人生を遮断しないための仕組みです。退院支援は患者さんの人生の再構築を支援することです。ベッド空けるために収容先を探すことではありません。 そして、退院支援に取り組んだ多くの看護師が、出会いが遅すぎることに気づきます。慢性疾患悪化予防のための外来看護、そして病気の受けとめや、病気の節目で生活・暮らし方を患者・家族が考えたときに、人生の最終章に向けた心づもり(ACP:アドバンス・ケア・プランニング)の場面を意図的に持ち、伴走する外来看護が、不要な入院を回避し、患者のQOL、その先にあるQOD(尊厳ある死)を保障することへつながるということです。 病院の機能・規模、そして診療科による疾患・状態像のケアプロセスマネジメントの特徴を踏まえ、「在宅療養支援システム構築と教育体制」について、再考してみませんか?2019年1月 宇都宮宏子はじめに

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