8Nursing BUSINESS 2019 春季増刊入退院支援加算とこれからの看護業務厚生労働省大臣官房厚生科学課 科学技術調整官 奥田清子*厚生労働省保険局医療課課長補佐として、2016年度診療報酬改定、2018年度診療報酬改定に携わる。 2018年度診療報酬改定では、それまでの「退院支援加算」が名称変更され、「入退院支援加算」となりました。より早期から退院後の生活を見すえて介入することは、地域包括ケアを推進するうえでも大きな意味を持ちます。本稿では、入退院支援を取り巻く診療報酬改定の背景や意義について解説します。 今回の2018年度診療報酬改定では、「地域包括ケアシステムの構築と医療機能の分化・強化、連携の推進」が重点課題とされました。その中で、「入退院支援の推進」もテーマのひとつに位置づけられました(図1)。 地域包括ケアシステムでは、「ときどき入院、ほぼ在宅」が基本になっています。患者さんの視点に立てば、病院はゴールではなく、ひとつの通過点に過ぎません。そのため、地域へとつなぐ入退院支援は、地域包括ケアの精神に関わる非常に大切な機能といえます。 地域包括ケアシステムの推進という大命題のもと、前回、今回の改定は、団塊の世代がすべて75歳以上となる2025年に向けた体制づくりという色合いが濃くなっています。前回の2016年度診療報酬改定では、ケアマネジャーとの連携の評価を手厚くすると同時に、「退院支援加算(現・入退院支援加算)1」で、ケアマネジャーなどとの連携が算定要件に盛り込まれています。よりスムーズな入退院となるよう、地域の医療機関や介護事業所などと日ごろから関係を築いていることも要件に位置づけられました。 今改定では、基本的な枠組みはそのままに、入退院支援の対象を、高齢者だけでなく子どもや障害者など、地域で生活する支援を必要とするさまざまな人に広げたのが特徴です。支援対象となる患者を示した「退院困難な要因」では、現場への調査の結果をもとに、生活困窮者、被虐待者またはその疑いのある人も追加されました。入院早期に患者さんの背景を把握し、「退院困難な要因」をさまざまな人を対象とする入退院支援1
元のページ ../index.html#6