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はじめに クリニカルラダーは、ベナーの看護論が公表されてから看護師の能力開発・評価システムのツールとして、多くの病院でその取り組みがなされてきました。クリニカルラダーには看護実践能力の向上や自己研鑽への意識向上など、多くのメリットがあります。また、「看護師のクリニカルラダー(日本看護協会版)」や「病院看護管理者のマネジメントラダー 日本看護協会版」が公表され、みなさんの関心度も高くなってきています。 その一方で、「クリニカルラダーの能力指標をもとにした研修を企画する人材がいない」「クリニカルラダーを導入しているが、評価システムに課題がある」、また、「クリニカルラダーをいつ、だれが、どう評価すればいいのか」「スタッフの思いとラダーが乖離している」「業務に対して適正に評価されていない」など、実際の運用、評価に至るまで、現場でクリニカルラダーを活用することに悩んでいる現状があります。 筆者は、600床の高度急性期病院で30年以上勤務しました。看護教員養成課程を修了後、基礎教育そして看護管理実践を通して、看護学生から、実践者、看護管理者の教育に深く携わる機会を得ることができました。そして、この実践経験をもとに、前職では独立行政法人地域医療機能推進機構(JCHO)看護研修専門職として、組織で働く1万4千人の看護職員を対象とした研修企画、運営、実施から評価を行ってきました。なかでも、認定看護管理者教育課程(ファースト、セカンド、サード)で専任教員を経験し、現場で働く多くの看護管理者の葛藤を知ることができました。看護職員のキャリア開発にどう関わったらいいのか、どんな病棟をつくっていったらいいのか、どうやって組織を動かす力をつけたらいいのかなど、管理者の学習ニーズはさまざまであることを知りました。 また、本誌でも取り上げているJCHOマネジメントラダーおよびキャリアラダーの開発に係ることができました。これまでの経験を総結集して本誌の編集に携わることができ、感謝しかありません。 認定看護管理者となった私の使命は、「看護職のライセンスを取得した看護師が、専門職として、自信と誇りを持って、プロフェショナルな仕事ができる人材(人財)を育成し続けること」に携わることです。働く看護師たちが自らのキャリアデザインを描き、組織は地域に求められる最良の看護を提供することができ、発展するためのキャリア開発プログラムを設計できる人財の育成と組織の発展の一助となればと思っています。これまで出会ってきた学生、ともに働いたスタッフ、一緒に学んだ管理者の方々に感謝するとともに、みなさんが自分の強みを生かしながら成長していく過程を見守ることが、今のいちばんの喜びです。また、クリニカルラダーを活用する根底に自己の教育観を持ち合わせてほしいと願っています。 さて、本誌は「クリニカルラダー」「マネジメントラダー」の作成、運用、評価の実際をまとめたものです。ラダーについての基本的な考え方と、自組織に合ったラダーを構築するための開発事例、評価までの活用事例を掲載しています。ラダー導入を検討している組織、研修を企画する人、現場でスタッフを評価する看護管理者のみなさまに広く活用していただければ幸いです。2019年9月 加藤由美

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