人口の約20%に達し、多くの医療スタッフ自身もAIDSが原因で死亡しました。国家規模のダメージを受けて、医師だけによるHIV陽性者の診断や治療が困難になり、看護師等に医療行為を任せざるを得ない状況が生じたようです。一方、欧米でもナース・プラクティショナー(NP)の職務が拡大されるようになってきました。こうした世界の流れの中で、日本でも医師の働き方改革に関する検討が行われ、タスク・シフティングの課題が取り上げられるようになってきました。 医師の働き方改革に関する検討会報告書(2019年3月28日)では、医師の働き方改革を進める基本認識として、「まず、我が国の医療は、医師の自己犠牲的な長時間労働により支えられており、危機的な状況にあるという現状認識を共有することが必要である」「医療は医師だけでなく多様な職種の連携によりチームで提供されるものであるが、患者へのきめ細かなケアによる質の向上や医療従事者の負担軽減による効率的な医療提供を進めるため、さらにチーム医療の考え方を進める必要がある」「看護師等が医師がいないことで患者の命を救うことを躊躇することがないように(中略)安全性・有効性を確認しつつ医師以外の医療従事者や患者の思いも含めた検討も重要である」と述べています。 医療業務において、医師以外の職種へのタスク・シフティング(業務の移管)やタスク・シェアリング(業務の共同化)といった業務の整理がありますが、これからタスク・シフティングを進めるうえで、まず現行の各資格のもとで各専門性を十分に発揮していくための役割分担をどのようにしていくかについての業務整理が急がれるところです。 医師にしかできない業務に専念できる環境をつくるためには、他職種へのタスク・シフティングは欠かせないものです。医師以外の職種で分担する業務として具体的にあげられたものは、初療時の予診、検査手順の説明や入院の説明、薬の説明や服薬の指導、静脈採血、静脈注射、静脈ラインの確保、尿道カテーテルの留置(患者の性別を問わない)、診断書等の代行入力、患者の移動があります。しかし、これらの業務はすでにほとんどの病院で通知以前から看護師や薬剤師、医療クラーク等の他職種に分担されて行われています。 現在は、すべての医療提供の判断や指示を医師が担っています。今後、医療ニーズが増加する中で医師がすべてに対応する仕組みのままでは、医師の業務量はさらに増加し、タイムリーな対応も困難になると予想されます。医師のタ10Nursing BUSINESS 2020 春季増刊
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