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働き方改革から考えるパスと看護記録のあり方 労働者がそれぞれの事情に応じた多様な働き方を選択できる社会を実現する「働き方改革」を総合的に推進するため、長時間労働の是正、多様で柔軟な働き方の実現、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保等のための措置が、働き方改革を推進するための関係法律の整備に関する法律(平成30年法律第71号)で成立しました。これを受け、2019年4月1日から施行された時間外労働の罰則つき上限規制、年次有給休暇の年5日の取得義務づけや、勤務間インターバル確保の努力義務化、正規職員と非正規職員との間での不合理な格差の禁止(同一労働同一賃金)は、看護職にも関わってきます。とくに、労働時間と交代制勤務のあり方については、看護職の働き方に深く関わっています。 看護職は、就業を継続することで知識や技術等が集積され、さらに経験を積み重ねることで専門職としての能力を高めていくことができます。つまり、医療や看護の必要な場に、看護力のある人材を安定的に確保するためには、働き続けるための環境の整備が重要となります。労働人口の減少と多様な働き方の導入が進められる中、現場では夜勤のできる職員の不足が深刻化しています。いかに医療や介護の質を担保しつつ所定外労働時間を短縮していくのかなど、働き方の改革は急務となっています。中でも所定外労働の業務のうち、常に上位にあるものに看護記録に要する時間があります。 業務を効率化しつつ医療の工程を管理していくには、チーム医療を展開して医療を標準化していく必要があります。医療を標準化していくことは、質の保証にもつながります。つまり、日ごろの業務をパス化することで業務整理と効率化が図れます。 パスが日本に導入されてから四半世紀が経過し、多くの病院で多数のパスが作成・使用されています。しかし、パス委員の世代交代が進み、入職したときからパスがあって当たり前という新人看護師やスタッフが多数を占めています。 そのため、現場スタッフはパスの本質の理解が十分とはいえず、パスを活用するのではなくパスに縛られるという問題が生じています。また、パスと看護記録の関連についても、まだまだ現場には誤解があるようです。たとえば、バリアンス記録と看護記録を混同している例もあります。医療現場の働き方改革が進められていますが、パスの本質が理解され、より有用に運用されればタスク・シフティングの一助にもなります。 本書ではパスの基本を押さえるとともに、パスの分析・改定・アウトカム評価を行うことができるよう、その仕組みと運用を解説しています。院内教育の場面や病棟でのマニュアルとして活用されることを願っています。一般社団法人日本看護業務研究会 代表理事/福井県立大学 理事・教授大久保清子はじめに

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