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また、これに関連して、臨床の現場ではしばしば「キャリア発達」や「キャリア開発」という用語を用います。この2つの英語表記はいずれも「career development(キャリアデベロップメント)」です。ただ、キャリア発達の主体は個人であり、キャリアを個人のニーズ(自分のキャリアをどうしたいか)からとらえようとする概念です。それに対してキャリア開発は、個人のニーズだけでなく、個人を取り巻く外部環境との相互作用を通して、それらと折り合いをつけながらどのように進んでいくかという概念です。ちなみに神戸大学医学部附属病院看護部は、キャリア開発について、「個々の看護師が個人のライフサイクルに応じた能力を発揮し、組織の課題との統合を図りながら、職業を通して自己実現に向けた活動を行うこと」と定義しています。このように、みなさんが部署の看護師長とともに看護職のキャリア開発に取り組む際には、キャリアやキャリア開発をどのように定義するかが重要であると考えています。組織内キャリアの3つの軸米国の経営学者のエドガー・シャインは、組織内のキャリアを3つの軸でとらえるという「組織の3次元モデル」3)を提示しました。このモデルをもとに、看護職のキャリアについて考えてみましょう(図1)。1つ目の軸は、スタッフナースから主任、看護師長、看護部長と職位・職階が上がるように、縦方向、あるいは上へと昇っていく軸です。2つ目は、専門看護師や認定看護師などのスペシャリストナースに代表されるように、特定領域を極めながら中心に向かって進んでいく軸です。そして3つ目は、ジェネラリストナースに代表されるように横に広がる軸。言い換えると、特定の分野や領域にとらわれず、サービスを提供することを志向するキャリアの進み方です。看護職の場合、縦方向へのキャリアの方向軸に進まない限り、サラリーアップなどの処遇が伴いにくいため、キャリアアップというと、どうしても上に昇ることだけに関心がもたれがちですが、組織内のキャリア開発を考えるにあたっては、3つの軸が存在することを管理者は理解しておくことが大切です。加えて、看護職の場合、出産・育児のためしばらく職場を離れることがあります。このような状況を「キャリアブランク」あるいは「キャリアダウン」とい10Nursing BUSINESS 2020 夏季増刊

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