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 「看護管理者のための臨床倫理をテーマとする特集号を出したい」というお話をいただいて、雑誌の増刊号とはいえ1冊まるごとこのテーマだというと、私の感覚では原稿をあつめるのに1年、出すのに1年かかると思ったのですが、全部で半年もかけずに出すということで驚きました。驚いたものの編集者が出す気でいると分ったので、内容について考えはじめました。 当初は、副題のようにして「看護管理者として意思決定支援するには」といった言葉がついており、これはここのところしばしば依頼される患者本人や家族の支援のことではなく、スタッフの倫理的意思決定の支援のことだなと分かったのです。と同時に、本年度の医療・ケア関係の管理者は、組織としてCOVID-19拡大防止に取り組む中で、住民の健康といのちを護る責務、また組織に属するスタッフをサポートする、組織の健全な持続と発展を目指すといった組織としての倫理に関して、通常をはるかに超えた厳しい状況におられるだろうとも思ったのでした。かつ、認定看護管理者養成の3つのレベルを進んでいくと、倫理に関しても組織をどうマネジメントするかということになっていくことは知っていましたので、浅学非才を顧みず、また時間的余裕のなさを忘れて、臨床倫理と組織倫理にまたがるテーマにしようと思ってしまったのでした。 幸い、多くの部分はインタビュー、対談、座談会といった企画にして、声を書にまとめる編集側の力技を見せていただけるとのことでしたので、私はこれはと思う看護部長さんたちをはじめとする現場の看護管理者を選べばよかったのです。まずは、初めてお会いしてから連携がもう35年間になろうという石垣靖子先生を柱とし(第1章)、倫理に関わる活動で知り合った方々を思い浮かべつつ、ご協力いただきたい方をリストアップしましたところ、結果として皆さまが「石垣つながり」だったのでした。幸い快くご協力いただきましたので(第3、4章)、後は私が無謀にも手を広げた概説(第2章)を通常に反したペースで脱稿できればなんとかなるということになり、現在、なんとかなりそうな成り行きです。なお、臨床倫理の事例検討については、現在別の書籍(近刊、本書112頁参照)を用意しておりますので、そちらも併せご覧いただければ、看護管理者の倫理の全体像が見えるかと思います。 振り返ってみれば、ご協力いただいた看護管理者の皆さまには、COVID-19が収束に向かう目途もたっていない状況でご無理をお願いしたなと反省し、そういう中で日本の各地で厳しい状況にある看護管理者の皆さまに「力づけられる話・未来が明るく見える話」をお届けしたいとご協力くださったことに、ただただ感謝あるのみです。 この特集号により、各地の皆さまとの交流の輪、そして医療・ケアの質の向上のための協働の輪が広がることに期待しています。2021年2月岩手保健医療大学 学長臨床倫理ネットワーク日本代表  清水哲郎はじめに3Nursing BUSINESS 2021春季増刊

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