倫理的実践とは、倫理を学んで初めて実現できるもの―現場ではそうした理解があるが、「しっかりとケアを行えば、それはすでに倫理的実践となっている」と石垣、清水の両氏は説く。本書の幕開けとして、あらためてケアと倫理の関係を考えてもらった。実践家と哲学者の出会い、そこから生まれたもの石垣 清水先生との出会いは、これまでさまざまな場で語ってきましたが、私にとってはその度に初心に返るよい機会となっています。この場をお借りして、もう一度振り返ってみたいと思います。清水 最初の出会いは1986年に、石垣先生が看護部長を勤められていた東札幌病院に患者家族として訪ねたときですから、30年以上に亘るおつきあいになりますね。初診時、待合室で待っていましたら、石垣先生がわざわざごあいさつに来てくださって、これが石垣先生との初めての出会いでした。後から、すべての外来患者に看護部長自らあいさつに出向かれることを知って敬服したのを覚えています。 人生のなかで印象に残っているシーンはいくつかありますが、この出会いもその1つです。そのときのたたずまいや石垣先生の表情は、今でも思い出されますね。 東札幌病院には、東京でがんの治療をしていた妻が、私の赴任していた札幌に来ることになって治療の継続のために紹介状を持って受診したわけですが、いろいろとご相談するなかで石垣先生との交流が深まっていきました。やがて、私が哲学を専門としているということで、東札幌病院で行っていた職員向けの倫理セミナーの講師をお願いされました。話してみたところ波長があったのか、次はこのテーマでとお願いされるようになり、気がつけばレギュラーとなっていましたね。当時、東札幌病院が緩和医療学会の設立に向けて牽引役と8Nursing BUSINESS 2021春季増刊石垣 靖子 × 清水 哲郎対 談1章ケアと倫理、そして看護管理者に期待されること
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