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 Activities of Daily Living(以下、ADL)の向上には「コツ」があります。1つは「ニーズ」です。患者さんが「一人でできるようになりたい」と思うのは当たり前ではありません。リハビリテーション(以下、リハ)を目的に医療・介護施設に来られる方は、自身の意思にかかわらず入院・入所されていることが多いと思います。そのなかで私は相手の状況把握が不十分なまま介入し、「リハなんかしたくない」と患者さんからお叱りを受けたことがあります。本邦における超高齢社会では、年齢や自身の価値観などにより「残りの余生を楽に過ごしたい」と思う方が存在します。その背景を考慮すると、患者さんの社会的背景を理解し、共感的理解を示しつつ、不動による苦痛やリスクを回避するためにリハを提供する技能が必要となります。それは患者さんにかかわるすべての職種がもつべき「リハマインド」の1つです。 さらに運動学習の要素である「連続スキル」の考え方も有用です。ADLは起き上がりなどの「基本動作」や食事などの「身のまわり動作」に分けられます。各動作に向上のコツがありますが、ふだんの生活ではそれぞれが連続して行われます。例えば「食事」を遂行するには、適切な姿勢や覚醒、認知機能が必要です。車椅子に座りっぱなしで姿勢が崩れ、覚醒状態が低く、今日の献立が不明な状況で食事しても自立度は向上しません。そう考えると、起き上がるときから適切な座位姿勢になるよう、患者さんの気分を高めたり、腹部の筋活動を高めるような起き上がり方を誘導したりすることが「食事」の始まりになります。つまり、すべてのADLが「連続」ととらえ、基本動作や身のまわり動作の方法をセラピストや看護師などで共通認識し、同じ考え方の下で患者さんにかかわることがADL向上のコツだと思います。 以上を前提として、この本書をご覧いただければと思います。本書は、臨床現場で活躍している方々にADL向上のコツを記載していただきました。そのなかで現場に活用できるフォーマットも多く掲載しており、業務において参考になると思います。またIADLについても言及しており、幅広く患者さんの生活に有用な情報を掲載しています。この本書が皆さんの業務における一助になれば幸いです。2017年8月 医療法人瑞心会渡辺病院リハビリテーション科科長壹岐英正編集のことば

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