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第章2目的別の看護記録看護とセラピストが共有できる(ADLについての)看護記録4ないことで、嚥下には問題はないと判断していることがうかがえます。そして、自己摂取を中断した要因として、疲労に着目しています。しかし、疲労に関するアセスメントが明らかではありません。また、疲労と判断した患者の訴えや、食事摂取の経過にともなう動作の変化が記録に残されていません。つまり、食事動作に関連した記録が少ないといえます。この事例では、「食事をするだけで疲れる」という患者の状況とはどういうことなのか、をアセスメントの視点にしてみます。食事動作は実は手指や上肢だけの動きだけでは困難です。安定した座位姿勢、固定性のある肩や上腕、なめらかに動く前腕や手首、細やかな動きの手指など、多様な筋や関節の動き(コントロール)が必要です。片麻痺であることは、座位や肩・上肢の動作に不安定さを引き起こします。非利き手では、なめらかな前腕や手首の動き、手指の細やかな動きは至難のわざです。疲労の影響は、時間の経過によりわかりやすくなるといえます。夕食であることや、時間の経過で患者の食事動作がどのように変化しているかを記録するとよいです。嚥下状態はもちろんですが、道具(ここではスプーン)の操作はうまくできているが、姿勢はどうかなど、動きを記録するとセラピストが介入の糸口を探しやすくなります。ADLは毎日行う動作のため、「楽」にできることは重要です。なにを整えたら患者が楽になるかを考えましょう。良い例日時♯記録1/2518:301S「いい。いらない。疲れました、戻ります。」Oグリップ付きスプーンを左手で把持し自己摂取する。食事の後半からペースが遅くなる。肩関節の外転が顕著になり、口まで運ぶ間にこぼすことが多くなる。20分で1/2摂取する。座位姿勢の保持は可能だが、徐々に右に傾いている。姿勢を修正し自己摂取を促すが摂取せず、介助に対して上記Sあり、帰室を希望する。A左手でグリップ付きスプーンの操作は可能だが、肩関節の外転が顕著なことから、ひじや手関節の動きがなく、食物のすくいや運びが困難になっている。座位姿勢の右側への傾きは、左手を口元へアプローチするために体幹が傾き、姿勢が崩れやすくなっていると考える。このため、30分で8割摂取という成果目標に達していない。P継続。食事による疲労が軽減できるよう、食堂への誘導時間や、スプーンの使用方法の評価、テーブルの高さ調整や車椅子のシーティングをセラピストへ依頼する。●1872018秋季増刊
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