92019秋季増刊1章1摂食嚥下機能を理解するための解剖生理知識編摂食嚥下機能のうち嚥下反射は、一度惹起されると自分の意思でやめることができない反射としての動きになります。嚥下反射を引き起こすこと(惹起)に関与する刺激の多様性も、嚥下機能を理解するうえで重要なポイントとなります。図1は、嚥下反射を引き起こすメカニズムを示したものです。ここでは、自分の意思で制御できる運動(随意運動)と制御できない反射・反応としての運動を整理してみます。まず、随意的に制御できる運動が多い摂食咀嚼機能について解説します。口を開けたり閉じたりする運動や、舌を突出したり舌を丸めたりする運動は、それぞれ開口筋摂食嚥下に関与する運動機能の随意的惹起と反射性惹起について群、咀嚼筋群、挺てい舌ぜつ運動に関与するオトガイ舌筋などの外舌筋群、舌の形を変形させる内舌筋群などが関与しています。これらの動きと支配神経については後述しますが、これらの動きは随意的に制御可能であり、さまざまな間接訓練の基礎となっています。しかし、実際に食べ物が口腔内に入った後、咀嚼して食べ物を取りまとめて食塊を形成する動きや咀嚼時に食塊が能動的に喉こう頭とう蓋がい谷こくに輸送されるstage Ⅱtransportに関与する舌運動、さらには口腔準備期に相当する送り込み運動(squeezing)は、不随意に行われるオートマチックなものであり、その動きはcentral pattern generator(CPG)によるものと考えられています。CPGの存在場所は、さまざまな動物実験から中脳や下位脳幹の背内側部2)といわれています。この食塊形図1嚥下反射惹起のメカニズムa:随意的嚥下反射。意識して嚥下する場合。前頭葉連合野が“ごっくん”するように大脳皮質の島にある嚥下皮質野に命令する。命令を受けた島皮質野は、皮質延髄路を介して延髄にあるCPGを刺激し、疑核が嚥下反射関連筋群を連続的に活動させて“ごっくん”される。b:末梢神経性嚥下反射。食塊や唾液などによる迷走神経刺激で嚥下する場合。高齢者など、嚥下反射惹起が遅延している場合には、梨状窩まで達してから迷走神経を経て孤束核が刺激され、CPG/疑核が“ごっくん”を惹起させる。孤束核疑核IN PUTOUT PUT前頭葉連合野ごっくん命令前頭断島皮質嚥下皮質野島皮質延髄路CPGCPG迷走神経・舌咽神経感覚枝咽頭収縮筋・喉頭筋上筋群・輪状咽頭筋ab
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