1372020秋季増刊●一方で左右半球の離断によって左半球の情報が右半球に送られないために、右前頭葉にある運動記憶が視覚的、触覚的に触発された行為が起こると考えられている(図2)。箸は持てなかったが、ピアノは弾けた女性の症例 ご飯を食べようとして右手で箸を持つと左手が邪魔をします。髪をとこうとして右手でくしを持つと左手が邪魔します。Aさんは50歳代の女性でした。「どうしてだろうね?」と毎日戸惑いながら試行錯誤を繰り返し、なんとか目的行為をこなしていました。 Aさんは音楽が趣味でピアノが得意でした。キーボードで演奏してもらうと、スイッチを入れたり音量を合わせたりする操作は拮抗失行でもたつきましたが、いざ弾いてみると右手と左手がそれぞれ滑らかな動きをみせ、上手に演奏できました。 このピアノ演奏をヒントに、右手のみで運動するより左右手で協調的に動かす練習をはじめ、右手で箸を持つ際に左手で茶碗を持つことで拮抗失行が抑制できるようになりました。最初はぎこちない動きでしたが、日々繰り返すことで徐々に症状は軽減しました。ある患者さんの為季周平図2 拮抗失行の出現メカニズム目的の行為左手の運動右手の運動右左意図しない行為道具使用の知識5行為の障害
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